# 仮定・限界・次の課題

このプロジェクトが「何を見て、何を見ていないか」。

## 仮定

| 項目 | 仮定 | 影響 |
|---|---|---|
| 電流 | **細線電流(フィラメント)**。コイルの中心線に全電流が流れる | 導体の断面の中・すぐ外では実際と違う。導体から離れた点(数 tube 以上)では十分 |
| 形 | 円形コイルを折れ線(N=256 本・図は 128 本・磁力線は 48 本)で近似 | 軸上の相対誤差 1e-4(N=256)。2次収束。導体のそばほど誤差が大きい |
| 特異点 | 導体の中心線から `tube` より近い点は NaN(図では塗らない) | 導体表面の磁場は `tube×1.05` の点で代表 |
| 磁性体 | 無し(空気・真空) | 鉄シールドなどがあれば磁場は変わる |
| プラズマ | **無し**(真空磁場だけ) | プラズマの圧力・電流が作る磁場・平衡・安定性は見ていない |
| 単位 | 計算 m・A・T。CAD mm。換算(×1000)は1か所だけ | |
| 比較の条件 | 同じ格子・同じ電流の大きさ。トロイダルは合計アンペア・ターンを同じに | 「同じ条件」の意味はこれ。電流を変えれば数字は変わる |
| 質量の目安 | `tube` の太さの円断面 × 導体の長さ × 密度 8,000 kg/m³ | 本物のコイル(超電導線+冷却管+構造材)の質量ではない。比較の目安だけ |
| 力 | コイル同士の電磁力(他のコイルの磁場 × 自分の電流)。10の案では自分の磁場によるフープ応力は含まない(4つの環境の炉では式で入れた) | 支持構造の一次の目安 |
| 磁場エネルギー | 格子の箱の中の ∫B²/2μ₀ dV(箱は配置ごとに自動) | 箱の外の分は含まない。箱の大きさに依存する |
| ロスコーン角 | asin(√(B_min/B_max)) | 単純ミラーの粒子の目安。衝突・電場・不安定は入っていない |

## 限界(言わないこと)

- 磁力線の図だけから「プラズマを閉じ込められる」「核融合炉として成立する」とは言わない。
- 「最適」と言わない。目的関数と制約条件を定義していない。「今回の比較条件で有望な候補」とだけ言う。
- 発電出力・プラズマの安定性・材料寿命・実機としての成立性は、この段階では扱わない。
- 4つの環境の炉の放熱の面積・遮蔽の厚み・容器の厚みは、教科書の式と仮置きの数字による一次の目安。中性子の輸送計算・温度の分布・構造の詳しい解析はしていない。

## 計算の範囲(2つの段)

| 段 | 計算したもの | 計算の仕方 |
|---|---|---|
| 10の案 | コイルが作る真空の磁場・コイル同士の力・導体の量・漏れ磁場 | ビオ・サバール則(解析式で検証済み) |
| 4つの環境の炉 | コイルの電流・放熱の面積・内側と外への遮蔽の厚み・真空容器と断熱容器の厚み・端を開けるか・ケースと支柱の太さ・漏れ磁場の柵 | 磁場は同じビオ・サバール則。ほかは一次の目安の式(下の表の仮置き) |
| どちらもしていない | プラズマが燃えるか(圧力・安定性・閉じ込め・加熱)、中性子の輸送計算、温度の分布と冷却の配管、材料の寿命、発電量の予測、コスト | — |

## 4つの環境の炉の仮定

| 項目 | 仮置き | 何に効くか |
|---|---|---|
| 芯の目標 | 軸上の磁場 中央 1.2 T・端のコイルの面 4.4 T・首のプラズマ半径 0.32 m | コイルの電流(2点の目標から連立で解く) |
| 端のコイルの位置 | 位置 ÷ 半径 = 3.0(元の案と同じ) | 大きいコイルほど炉が長くなる |
| 電流密度 | 中央 100 A/mm²・端 200 A/mm²(高温超電導・導体全体) | 導体の太さ |
| 核融合の出力 | どこも 30 MW(**大きさを比べる物差し。出力の予測ではない**) | 中性子と荷電粒子の量 |
| 燃料の中性子の割合 | D-T 0.80・D-D 0.38・D-³He 0.05(文献の目安) | 内側の遮蔽の桁数・端の発電器の大きさ |
| 燃料の選び方 | 地上 D-T・月 D-³He・火星 D-D・軌道上 D-³He(手に入るもの・熱の捨てやすさから選んだ仮説) | 芯の大きさ・放射器 |
| 内側の遮蔽 | 1/10 価層 0.18 m。D-T で 3 桁、他は中性子の量で桁を引く。増殖層は D-T だけ 0.25 m | コイルの半径 |
| 容器の厚み | 長い円筒の外圧座屈(補強リングなし・安全率 3)。外圧 1 Pa 以下なら殻なし | 真空容器・断熱容器 |
| 端を開けるか | 発電器の電極の間の半分が開いているとして、分子流の開口のコンダクタンスで排気の速さを出し、端の圧力が 1e-3 Pa 以下なら開ける | 月・軌道上の端の形 |
| 変換 | 熱 → 電気 35%(排熱 500 K)・直接発電 60%(排熱 900 K)・発電器が受けられる熱 1 MW/m² | 廃熱・放射器・発電器の直径 |
| 熱の捨て方 | 地上は冷却塔 1 区画 10 MW。宇宙は両面の放射(放射率 0.9・周り 月 200 K・火星 210 K・軌道 4 K)。火星は対流 2 W/m²K を足す | 放射器の面積 |
| 外への遮蔽 | D-T・30 MW で 6 桁。コンクリート 0.40 m を密度比で換算(月のレゴリス 1,800・火星 1,500 kg/m³)。影の盾は 0.25 m | 建屋の壁・盛り土・影の盾 |
| 漏れ磁場 | 人がいる場所は 0.5 mT の柵 | 柵の半径 |

燃料ごとの燃えやすさ(温度・閉じ込め・プラズマの圧力)は計算していません。D-³He と D-D は D-T よりずっと燃やしにくく、この比較は「燃えたとしたら形はどうなるか」です。

## 磁力線の描画条件と打ち切り条件(記録)

- 進む向き: B/|B|。4次ルンゲ・クッタ、1歩 = 0.012 × 代表半径 R(m)。コイルは 48 本の折れ線(3D 表示用は 32 本・1歩 1.5 倍)。
- 出発点: 断面の面の横軸の上、中心から 0.08R〜0.9R の 7 点 ×(±)= 14 本。カスプは z=0.35 m から(中心は B=0 で進めない)。トロイダルは磁気軸の内外 5 点。3D 用は半径 0.35R の円に 8 点と 0.7R の円に 10 点。
- 両向き(±B)にたどって 1 本につなぐ。
- 打ち切り: (1) 格子の箱の外に出た (2) 最大歩数(既定 2,500・双極子 4,000・トロイダル 3,000) (3) 出発点に戻った(閉じた線) (4) 導体に当たった(中心線から tube 以内) (5) |B| < 1e-7 T。
- 打ち切りの理由は案ごとの数値データに残る(例: ミラーは全部「箱の外」、双極子・トロイダルは「閉じた」)。
- 磁力線に沿ったミラー比は、線の上の |B| の山が 2 つ以上あれば最初の山と最後の山の間(粒子が往復する区間)だけで取る。最小がほぼ 0 の線は未定義。

## 検証したこと(詳しくは validation.md)

1. 単一円形コイルの軸上磁場 vs 解析式(z = −3〜+3 m・241点): N=8〜1024 の収束。2次収束。
2. 軸外 vs 完全楕円積分の厳密解(導体から 3 tube 以上離れた 1,260 点)。
3. 特異点の扱い(tube の内側は NaN、すぐ外では有限で厳密解に近い)。
4. 単位(m → mm の例)。

## 最初の炉の概念設計(月の1案)の仮定

| 項目 | 仮置き | 何に効くか |
|---|---|---|
| コイルケースの許容応力 | 500 MPa(極低温のステンレス) | ケースの厚み |
| ケースと容器の隙間・容器の厚み | 0.10 m・20 mm | 容器の半径 → プラズマの太さ。容器の質量(運ぶ質量のいちばん大きな項目) |
| プラズマと内壁の余白 | 5 cm | プラズマの太さ |
| 端の部屋 | 境界の磁力線が半径 1.0 m に広がる所に端板・内半径 1.2 m | 容器の長さ・熱の広がり |
| 支柱 | 1 か所 8 本・ステンレス E = 200 GPa・許容 300 MPa・座屈の安全率 3・薄肉の管(t = D/20) | 支柱の太さ |
| 冷却 | コイル 20 K・多層断熱材 1 W/m²・脚 2 W/本・冷凍機はカルノーの 20%・排熱 300 K | 冷凍機の電力・小さな放射器 |
| 炉の熱 | 1 MW(**発電出力の予測ではない**。放射器の大きさを見る物差し) | 放射器の面積と枚数・敷地の広さ |
| 放射器 | 500 K・両面・放射率 0.9・周り 200 K(南極域の目安)・8 kg/m² | 放射器の面積と質量 |
| 遮蔽 | 14 MeV 中性子のコンクリートの 1/10 価層 0.40 m を密度比でレゴリス(1,800 kg/m³)へ換算・目標 100 万分の 1 | 盛り土の厚み |
| 運ぶ | 荷室の直径 4.6 m・導体の密度 8,000 kg/m³・屋根 30 kg/m²・配管 20 kg/m・冷凍機 40 kg/kW | 運ぶ質量・部品が荷室に入るか |

炉の概念設計で**見ていない**もの: プラズマの圧力・電流・安定性・閉じ込め時間・加熱・出力、中性子によるコイルの劣化と内側の遮蔽、端板の熱負荷の実際の値、支柱の腕の曲げ・ケースのねじれ・月震、燃料の供給と回収・トリチウムの増殖、放射器と冷凍機の系統。このうち内側の遮蔽と冷凍機の電力は、あとの4つの環境の炉で一次の目安として入れた。

## 次の課題(順番)

1. **力 → 構造**: ケースのねじれ・支柱の腕の曲げ・月震を入れた解析。ケースと支柱の一次の太さは4つの環境の炉で出した。
2. **排熱 → 放射器の系統**: 配管・ポンプ・温度の分布と、運転温度を変えたときの面積。一次の面積は4つの環境の炉で出した。
3. **質量**: 超電導線・冷却管・構造材を含む実断面での質量。輸送の単位(1個の大きさ・重さ)に分ける。
4. **遮蔽 → 中性子の輸送計算**: モンテカルロ法で、1/10価層の目安で出した厚みを確かめる。中性子によるコイルの劣化も見る。
5. **閉じ込め**: 粒子軌道(ロスコーンの中の粒子は逃げる)と MHD の最初の評価。別の道具が要る。
6. **道具の側**: 有限太さの導体(断面を複数のフィラメントで表す)、非円形コイル(D形・鞍形)、最適化(目的関数と制約を決めてから)。
