# 宇宙・月面の条件と、設計変数への効き方(整理)

このプロジェクトで「宇宙・月面向け」と言うときに、何が地上と違い、それがコイル配置のどの変数に効くかをまとめる。
ここに書くのは条件の整理であって、数値計算で確かめた結論ではない。確かめたものは各案のページに「計算で確認できたこと」として分けて書く。

まず前提として、**宇宙の真空や低温を理由に、真空容器や冷却設備を省けるとは仮定しない**。
- 月面の「真空」は 10⁻¹⁰ Pa 級だが、炉の中は燃料を入れて 10⁻⁴〜10 Pa で動かす。壁の脱ガス・ダストの侵入・燃料の回収のために、容器は要る。
- 「低温」は日陰の話で、日なたの月面は約 +120 ℃。超電導コイルの 20〜70 K は能動冷却でしか作れない。宇宙で捨てられる熱は放射だけなので、むしろ排熱が地上より難しい。

次に、**プラズマを閉じ込める部分(コイルと容器)の形**と、**放熱・支持・遮蔽を含む設備全体の形**は分けて考える。
下の表は最初の10案のための整理で、条件がコイルの置き方のどこに効くかを書く。後者(設備全体の大きさ)は、あとから作った4つの環境の炉で一次の目安として計算した(放熱の面積・遮蔽の厚み・容器の厚み・支柱・漏れ磁場の柵)。

| 条件 | 地上との違い | 効く設計変数 | コイル配置への含み |
|---|---|---|---|
| 重力と支持構造 | 月面 1/6 g・軌道上 0 g。自重は小さいが、**コイル同士の電磁力(本計算で MN 級)は変わらない** | コイル間の距離・向き・支持の方向 | 自重でなく電磁力が支持構造を決める。引き合う配置(同方向電流)は圧縮材、反発する配置(カスプ)は引張材で受ける。力が小さい配置ほど構造質量が減る。各案のコイル間の力を見る |
| 排熱と放射器 | 対流なし。捨てられる熱は放射 σT⁴ だけ。放射器の面積は捨てる熱と温度で決まる | 設備全体の形・向き(影)・コイルの冷却温度 | コイルを高温超電導(20〜40 K 運転)にすると冷却の仕事が減る。配置が開いている(ミラー・カスプ)ほど放射器を置く面が取りやすい。密なトロイダル配置は放射器が外周に押し出される |
| 輸送質量と組立 | 地球からの打上げ費がすべてに掛かる。大きな一体物は運べない。月面での組立は少人数・ロボット前提 | コイルの数・1つの大きさ・導体の量 | **コイルの数が少なく、1つが小さく、同じ部品の繰り返し**が有利。導体の長さと見た目の質量を比べる。トロイダル配置は「少ない数で済ませるとリップルが増える」トレードオフ |
| 遮蔽と設置場所 | 大気がないので中性子・γ線は遮蔽材だけで止める。月面ではレゴリス(砂)を遮蔽に使える・溶岩チューブや縦穴に置ける | 設備全体の形・軸の向き・炉を置く深さ | 軸が1本のミラーは「横倒しで溝に埋める」と周囲 3 方向をレゴリスで覆える。漏れ磁場が大きい配置は、周りの機器を遠ざける必要がある |
| 保守性 | 人が頻繁に行けない。部品交換はロボットか無人 | コイルの数・取り外しやすい配置 | 同じ形のコイルを並べる配置は予備を共通化できる。1個の大きなコイル(双極子)は交換が最も重い |
| 電源・燃料供給 | 太陽光は 14 日ごとに夜。月面に燃料(重水素・トリチウム)は無い(ヘリウム3は極微量) | コイルの電流・立ち上げの電源・運転の連続性 | 超電導コイルは一度流せば電源を切れる(永久電流)ので、電流の大きさそのものより「冷却を切らさないこと」が制約。配置の比較で電流(アンペア・ターン)を同じにしているのはこのため |

## この計算で見ているもの・見ていないもの

- 見ている(10の案・磁場の計算): コイルの配置による磁場の形(|B| の分布・軸上の分布・磁力線)、ミラー比、中心の一様さ、磁気井戸の兆し、導体表面の最大磁場、コイル間の力、導体の量の目安、漏れ磁場、磁場エネルギー。
- 見ている(4つの環境の炉・一次の目安の式): 放熱の面積(熱の収支と放射の式)、内側と外への遮蔽の厚み(1/10価層の目安)、真空容器と断熱容器の厚み(外圧の座屈)、端を宇宙へ開けるか(排気の速さ)、ケースと支柱の太さ(フープ力と座屈)、漏れ磁場の柵の半径。
- 見ていない: プラズマの圧力・電流とその磁場、安定性、閉じ込め、加熱、燃えるかどうか、中性子の輸送計算(遮蔽は目安だけ)、温度の分布と冷却の配管、材料の寿命、発電量の予測、コスト。核融合の出力は大きさを比べるために置いた数字。**磁力線の図だけから「閉じ込められる」「炉として成立する」とは言わない。**

## 次に必要な解析(条件ごと)

1. 力 → ケースのねじれ・支柱の腕の曲げ・月震を入れた構造の解析(一次の太さは4つの環境の炉で出した)。
2. 排熱 → 放射器の配管・ポンプ・温度の分布と、運転温度を変えたときの面積(一次の面積は4つの環境の炉で出した)。
3. 輸送質量 → コイルの実際の断面(超電導線・冷却管・構造材)での質量。ここでは見た目の太さ × 仮の密度でしか見ていない。
4. 遮蔽 → 中性子の輸送計算(モンテカルロ法)で、1/10価層の目安で出した厚みを確かめる。
5. 閉じ込め → 粒子軌道(ロスコーンの中の粒子は逃げる)と MHD の最初の評価。これは別の道具が要る。
