温根元漁港から見たヲンネモトチャシ跡(2009年撮影)。岬の上に盛った土が丸く重なり、「お供え餅」のように見える。
1467jpCC BY-SA 3.0Wikimedia Commons

北海道 · 根室市

根室半島チャシ跡群

ねむろはんとうチャシあと⁠ぐん

Nemuro Peninsula Chashi Sites

北海道根室市

チャシ山城日本100名城 1番

この城らしさ

日本100名城⁠の1番は、天守も石垣もない。アイヌの人びとが海辺の岬に掘った壕と⁠盛土だ。

なぜ?

チャシはアイヌ語で「柵囲い」と⁠いう意味で、砦のほか、まつりの場、見張り場、話し合いの場にも⁠使われたとされます。本州の大名の城とは成り立ちがまったく違いますが、日本城郭協会は2006年に日本100名城⁠を選んだとき、根室半島チャシ跡群⁠を1番にしました。いま見学できるのは、24か所の国史跡のうち2か所です。[1][2][3][8]

見逃したくない3つ

01
温根元漁港から見たヲンネモトチャシ跡(2009年撮影)。岬の上に盛った土が丸く重なり、「お供え餅」のように見える。1467jpCC BY-SA 3.0Wikimedia Commons

「お供え餅」の形をしたヲンネモトチャシ⁠跡

見る場所
温根元湾の西岸に突き出た岬。納沙布岬から車で約10分。遊歩道あり
注目する部分
岬の上に土を盛って壕で区切り、てっぺんに2つの平らな面を作った形。温根元漁港の側から見ると、全体の形がよく分かる
ここが面白い
漁港から見ると、丸い盛土が⁠重なってお正月⁠の「お⁠供⁠え餅」のように見えると⁠市は紹介しています。形がよく残ったチャシ跡と⁠して知られます。すぐ近くには約1,300年前⁠のオホーツク文化⁠の竪穴住居の跡もあり、この湾が大昔から人の暮らしの場だったことが分かります。[1][9][11]
見られるか
外から見られる外から自由に見学できる。周りは民家の敷地と⁠昆布の作業場で、立入禁止区域がある。車は指定の駐車場だけに停める。冬は除雪をしていない。
02

オホーツク海を見下ろすノツカマフ1号・2号チャシ跡

見る場所
ノツカマップ⁠湾⁠に突き出た岬の崖の⁠上(根室市牧の内)⁠。市街地から車で約20分
注目する部分
崖の上をぐるりと⁠囲む半円形の壕。1号は幅5m・深さ約3mの壕が2つつながり、70m×25mの範囲に広がる。壕の内側の盛土にも注目
ここが面白い
根室のチャシは、海に面した崖の上に半円形や⁠四角の壕をめぐらせる形が多く、ここはその典型です。この岬は、1778年にロシアの商人が交易を求めて来た場所であり、1789年の「クナシリ・メナシの戦い」のあと、アイヌの37人が処刑された場所でもあります。[1][4][10]
見られるか
外から見られる外から自由に見学できる。駐車場は乗用車2台分ほど。冬は除雪をしていない。
03

チャシの模型と⁠出土品が見られる歴史と⁠自然の資料館

見る場所
根室市花咲港209番地。JR根室駅からタクシーで約10分
注目する部分
遺跡からの出土品、チャシ跡に関する資料と⁠ジオラマ
ここが面白い
現地は土の高まりと⁠壕だけなので、先に資料館で形と⁠使われ方をつかんでおくと⁠見え方が変わります。市はドローンで測量したチャシ跡の立体地形図や⁠3次元データも公開しています。建物は1942年に海軍の通信施設と⁠して建てられたレンガ造りです。[1][5][3][9]
見られるか
外から見られる入館無料。月曜・祝日・年末年始は休館。日本100名城スタンプ⁠がある。

訪問の目安

最寄り駅
JR根室駅から
登り
未確認
所要時間の目安編集部の目安
1か所につき現地で20〜30分ほど。2か所と⁠資料館をまわるなら車で半日が目安
料金
無料
時間
9:30〜16:30
立入り
一部のみ見学できる

見学できるのはヲンネモトチャシ⁠跡⁠とノツカマフ1号・2号チャシ跡の2か所。ほかの22か所はふだん見に行けない。ヲンネモトの周りは民家の敷地と⁠昆布の作業場があり、漁港の中や⁠船揚場へは入らない。指定の駐車場以外への路上駐車は禁止で、守られないと⁠見学禁止になることもあると市と⁠観光協会が呼びかけている。冬は除雪していない。日本100名城スタンプ⁠は歴史と⁠自然の資料館、観光インフォメーションセンター(根室駅横)⁠、北方領土資料館(納沙布岬)⁠の3か所にある。

確認日:

この城の物語

01
史実

チャシとは何か

チャシは、北海道の先住民族アイヌ⁠の人びとが築いた囲いのある場所です。アイヌ語で「柵囲い」を意味し、砦だけでなく、まつりの場、見張り場、話し合いの場など、いろいろな目的に⁠使われたとされます。北海道では約500か所のチャシ跡が⁠確かめられています。大名が政治の中心と⁠して建てた本州の城とは、つくった人も目的もちがいます。[1][3]

02
史実

海を見下ろす崖の上に

根室市内には32か所のチャシ跡があり、そのうち24か所が「根室半島チャシ跡群」と⁠して国の史跡になっています。多くは海抜5〜50mの海岸の崖の上にあり、半円形や⁠四角形の壕をめぐらせた「面崖式」と⁠呼ばれる形です。壕を組み合わせた大きなものが多く、ほかの地域より密集して残っています。だれが築いたかを示す記録はなく、年代は16〜18世紀ごろと⁠されますが、正確には⁠分かっていません。[1][2]

03
史実

1789年クナシリ・メナシの戦い

江戸時代、この地方の交易は松前藩から権利を得た商人が仕切り、アイヌの人びとを暴力や⁠おどしで漁場で⁠働かせていました。1789年、国後島と⁠対岸のメナシ地方のアイヌが立ち上がり、和人71人を殺害しました。1798年にできた記録には、国後島の総首長ツキノエ⁠が国後島でチャシを築いて備えたこと、シャモコタン(根室市豊里)⁠の首長ノチクサも5か所のチャシを築いたことが書かれています。しかし両者が直接ぶつかることはなく、殺害に加わった37人がノッカマップに連れてこられ、処刑されました。[1][4]

04
研究上の解釈

北海道のチャシの中では新しい時代のもの

市は、根室のチャシは1789年の戦いとのつながりでも注目されていて、北海道のチャシの中では最後の時期のものとされると⁠説明しています。チャシがいつ、どの目的で使われたかは場所ごとにちがい、すべてが戦いのための⁠砦だったわけではありません。[2][1]

05
史実

埋まりきらずに残った⁠壕

建物や柵は⁠残っていませんが、根室ではチャシ跡や⁠竪穴住居の跡が長い年月をへても埋まりきらず、いまも地面の起伏と⁠して見ることができます。市はこれを生かして、ドローンによるレーザー測量で地形図を作り、4か所のチャシ跡を3次元の映像で公開しています。そのうち2か⁠所は、ふだん見に行けない場所です。[1][3]

06
史実

国史跡、100名城の1番、日本遺産

1983年に国の史跡に指定され、1984年に指定地が追加されました。2006年に日本100名城⁠の1番に選ばれてから国内外の見学者が増え、市はヲンネモトと⁠ノツカマフの2か所に遊歩道などを整えました。2020年には、根室海峡の鮭とともに生きた人びとの歴史を伝える日本遺産「鮭の聖地」の物語の一部にもなりました。ノッカマップでは1974年から毎年9月末、1789年の戦いで亡くなったアイヌと⁠和人を供養する⁠祭「イチャルパ」が、アイヌの人たちを中心に行われています。[2][6][4][7]

この城の人びと

年表

  1. 推定

    根室半島の各地にチャシが築かれる[1]

  2. ロシアの商人がノッカマップに来て交易を求める[1][4]

  3. クナシリ・メナシの戦い。ノッカマップでアイヌ37人が処刑される[1][4]

  4. ノッカマップで供養祭「イチャルパ」が始まる[4]

  5. 国の史跡に指定(1984年に追加指定)[7][2]

  6. 日本100名城⁠の1番に選ばれる[2][8]

  7. 日本遺産「鮭の聖地」の物語の構成文化財になる[6]

建物と⁠遺構

天守の状態

もともと⁠天守なし

チャシはアイヌの人びとが築いた壕と⁠盛土の囲いで、天守や⁠石垣はもともとない。

城全体のいま

市内32か所のチャシ跡のうち24か所が国史跡。多くは海岸の崖の上の草地や⁠原野で、遊歩道などが⁠整えられ公開されているのはヲンネモトチャシ⁠跡⁠とノツカマフ1号・2号チャシ跡の2か所だけ。

主な建物

跡地のみ国史跡(根室半島チャシ跡群⁠の一つ⁠)

ヲンネモトチャシ⁠跡

岬に盛土をして壕で区切り、頂上に平らな面が2つある。遊歩道あり。[1]

跡地のみ国史跡(根室半島チャシ跡群⁠の一つ⁠)

ノツカマフ1号・2号チャシ跡

1号は幅5m・深さ約3mの半円形の壕が2つ連なる。2号は幅約3m・⁠深⁠さ約0.5mの浅い壕。[1][10]

基本データ

種類
チャシアイヌの人々が築いた砦・祭祀・談判の場。本州の城とは成り立ちが違う
地形による分類
山城山の上に築いた城。登りがある編集部記事
時代
中世・近世編集部記事
天守の状態
もともと⁠天守なし天守は⁠建てられなかった編集部記事
築城者
−日本城郭協会
築城
16~18世紀日本城郭協会
見られる遺構
堀・土塁・曲輪編集部記事
文化財指定
国史跡(根室半島チャシ跡群)(1983年)⁠、日本遺産「鮭の聖地」の物語構成文化財(2020年)編集部記事
名城選定
日本100名城 1番日本城郭協会

旅の情報

立入り

一部のみ見学できる

見学できるのはヲンネモトチャシ⁠跡⁠とノツカマフ1号・2号チャシ跡の2か所。ほかの22か所はふだん見に行けない。ヲンネモトの周りは民家の敷地と⁠昆布の作業場があり、漁港の中や⁠船揚場へは入らない。指定の駐車場以外への路上駐車は禁止で、守られないと⁠見学禁止になることもあると市と⁠観光協会が呼びかけている。冬は除雪していない。日本100名城スタンプ⁠は歴史と⁠自然の資料館、観光インフォメーションセンター(根室駅横)⁠、北方領土資料館(納沙布岬)⁠の3か所にある。

住所

ヲンネモトチャシ跡: 〒087-0166 北海道根室市温根元55番地1 / ノツカマフ1号・2号チャシ跡: 〒087-0002 北海道根室市牧⁠の内130番地[9][10]

確認日: 2026-10-03

最寄り駅と⁠行き方

JR根室駅JR根室本線(花咲線)

未確認

駅から歩ける距離ではない。ヲンネモトへは根室交通バス納沙布線⁠で「納沙布岬」下車、徒歩約30分(観光協会は北方領土資料館から片道約40分・2.7kmとも案内)⁠。ノツカマフは車で市街地から約20分。駅からは観光タクシーの「納沙布岬・北方領土コース」に立ち寄りを加える方法も案内されている。[9][10]

確認日: 2026-10-03

開館時間・料金

根室市歴史と⁠自然の資料館
時間
9:30〜16:30
休館・休み
月曜(祝日の場合は翌日)⁠、祝日、年末年始(12月29日〜1月3日)
料金
無料[5][1]
確認日: 2026-10-03
根室市観光インフォメーションセンター(100名城スタンプ)
時間
6〜10月は8:00〜18:00、11〜5月は9:00〜17:00
休館・休み
年末年始
料金
無料[1]
確認日: 2026-10-03
根室市北方領土資料館(100名城スタンプ)
時間
9:00〜17:00
休館・休み
11〜4月は水曜、年末年始
料金
未確認[1]
確認日: 2026-10-03

車・駐車場

ヲンネモト: 根室市街地から道道35号根室半島線(オホーツク海側)⁠で約40分、納沙布岬から約10分。指定の駐車場に停める。ノツカマフ: 市街地から道道35号で約20分。駐車場は乗用車2台分ほど。[9][10][11]

確認日: 2026-10-03
公園・城域の開放時間
チャシ跡は屋外の史跡で、見学時間の定めは公式に記載なし確認日: 2026-10-03
所要時間の目安編集部の目安
1か所につき現地で20〜30分ほど。2か所と⁠資料館をまわるなら車で半日が目安
階段・坂・足もと
海岸の崖の上の草地。ヲンネモトと⁠ノツカマフには遊歩道があるが、周りは柵のない崖なので足もとに注意。冬は除雪されない。[1][2]
車椅子・ベビーカー
未確認確認日: 2026-10-03
トイレ・休憩
チャシ跡のトイレは未確認
英語案内・音声ガイド
現地や⁠資料館の英語案内は未確認。観光協会に英語サイトがある。[9]
季節の楽しみ
冬はチャシ跡の除雪をしていない。毎年9月末にノッカマップでイチャルパ(供養祭)⁠が行われる。[1][4]
撮影のルール
未確認
工事・休館・立入制限
ヲンネモトチャシ跡: 指定⁠の駐車場以外への駐車と、私有地・船揚場への立ち入りは禁止(2022年7月根室市・根室市観光協会)⁠。[11]確認日: 2026-10-03

歩きかたの⁠例

納沙布岬から歩くヲンネモトチャシ⁠跡 120分

  1. 根室駅前から根室交通バス納沙布線⁠で「納沙布岬」へ
  2. 北方領土資料館⁠で100名城スタンプ⁠を押す
  3. 北方館の前にある寛政の蜂起和人殉難墓碑⁠を見る
  4. 温根元湾へ歩く(片道約2.7km・約40分)
  5. 温根元漁港の側からヲンネモトチャシ⁠跡⁠の全体の形を眺め、遊歩道で上がる
  6. 同じ道を納沙布岬へ戻る

距離と⁠片道の時間は観光協会の案内。全体の時間は編集部の目安。バスの本数は少ないので時刻表を先に確認すること。漁港の作業場と⁠民家の敷地には入らない。

周辺の楽しみ

体験

西月ヶ岡遺跡

根室市西浜町にある国史跡。擦文文化の時代の竪穴住居の跡が台地の上に密集し、月面のクレーターのような景色になっている。[2]

確認日: 2026-10-03

編集部ガイド(見どころレビュー)

資料と⁠確認した情報をもとにした編集部の解説です。現地訪問の体験談ではありません。

こんな人におすすめ

100名城めぐりの1番目を訪ねたい人、アイヌの歴史に関心がある人、海と⁠草原の広い景色が好きな人に向く。天守や⁠石垣を期待すると⁠拍子抜けするので、「本州の城とはちがうもの」を見に行くつもりで。

ここを見ると⁠面白い

見るのは土の形。ヲンネモトでは漁港の側から、丸い盛土が重なる全体の姿を見てから上がると、壕でどう区切っているかが分かりやすい。ノツカマフでは崖の縁をめぐる半円形の壕の深さと、その先に広がるオホーツク海を見たい。

訪ねる前に

見学できるのは2か所だけで、どちらも市街地から離れている。バスは本数が少ないので、車か観光タクシーが現実的。ヲンネモトは民家と⁠漁の作業場のすぐそばなので、指定の駐車場を使い、作業のじゃまをしない。冬は除雪されない。

楽しみかた

先に歴史と⁠自然の資料館で出土品や⁠ジオラマを見ておくと、草地の起伏が「人がつくったもの」と⁠して見えてくる。市が公開しているドローンの立体地形図や⁠動画も事前に見ておくとよい。ノッカマップの岬では、ここが1789年の戦いの終わりの場所でもあることを思い出したい。

訪問者レビュー

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異説・未確認の⁠点

出典

  1. 1
    根室半島チャシ跡群根室市歴史と⁠自然の資料館(根室市)municipal確認日:
  2. 2
    国指定文化財根室市歴史と⁠自然の資料館(根室市)municipal確認日:
  3. 3
    根室半島チャシ跡群紹介動画を公開します根室市歴史と⁠自然の資料館(根室市)municipal確認日:
  4. 4
    1789年クナシリ・メナシの戦い根室市歴史と⁠自然の資料館(根室市)municipal確認日:
  5. 5
    施設概要(根室市歴史と⁠自然の資料館)根室市municipal確認日:
  6. 6
    日本遺産の認定について根室市歴史と⁠自然の資料館(根室市)municipal確認日:
  7. 7
    根室半島チャシ跡群(国指定文化財等データベース)文化庁heritage確認日:
  8. 8
    日本100名城一覧公益財団法⁠人日本城郭協会jokaku確認日:
  9. 9
    ヲンネモトチャシ⁠跡根室市観光協会tourism確認日:
  10. 10
    ノツカマフ1号・2号チャシ跡根室市観光協会tourism確認日:
  11. 11
    【個人様用】ヲンネモトチャシ⁠跡⁠を見学のお客様へ(2022年7月)根室市・根室市観光協会tourism確認日:
  12. 12
    根室半島チャシ跡群(文化遺産オンライン)文化庁heritage確認日:
  13. 13
    日本100名城・続日本100名城一覧公益財団法⁠人日本城郭協会jokaku確認日:
  14. 14
    Wikipedia「根室半島チャシ跡群」Wikipedia日本語版wikipedia確認日:
  15. 15
    Wikidata Q11110966Wikidatawikidata確認日:

掲載の状況

  1. 候補を発見確認済み
  2. 城郭・城跡と⁠して確認確認済み
  3. 基本情報を掲載確認済み
  4. 詳細記事を掲載確認済み
  5. 写真の利用条件を確認確認済み
  6. 訪問情報を確認確認済み

現地の変化や⁠誤り、使ってよい写真をご存じでしたらお知らせください。

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