都市の地下の化石海水
東京の南端、大田区の臨海部には『黒湯』と呼ばれる淡褐色〜黒褐色の温泉が広く分布し、古くから銭湯で使われてきた。大田区はこれを、メタケイ酸や炭酸水素塩類(重曹)を含む25℃以下の温泉で、大昔の海水に由来する『化石水』と説明する。黒い色の正体は、太古の海藻や植物が堆積して分解された有機物フミン酸。透明度は10cmほどで、多くは弱アルカリ性。火山のない平野で湧く温泉で、山の湯とは生まれ方がまったく違う。2026年1月時点で区内には17軒の温泉施設があり、東京23区で最多。NHKの番組で『大田区温泉郷』と呼ばれたこともある。[4][3][2]
棟梁が掘った銭湯
蒲田温泉は昭和12年(1937年)創業。浴場建築専門の宮造りの技術を持つ大工の棟梁、島定吉が掘削した。昭和の銭湯は東京の人々を支える重要なインフラであり、関東大震災や戦後の復興に欠かせない存在だったと公式サイトは書く。各家庭に風呂が普及し銭湯が減るなかで、蒲田温泉は時代に合わせて姿を変えつつ、90年近く同じ泉質と湧出量を保ってきた。黒湯で有名な蒲田でもトップクラスの知名度を持ち、都内屈指の熱湯、温泉釜めし、有名人にもファンがいるオリジナルTシャツで知られる。[1]
入り方
営業は年中無休で10:00〜24:00。入浴料は大人(12才以上)600円、小学生200円、未就学児100円。サウナは別に300円。支払いは現金のみ。タオルや石けんがなくても『手ぶらセット』900円(入浴料込み)で入れ、バスタオルのレンタルは200円。黒湯の浴槽は高温と低温に分かれ、高温側は50℃近くになる日もあるというので、まず低温側から。電気風呂、ジェットバス、水風呂、男女それぞれにサウナがあり、男湯には整いスペースも。赤ちゃん連れにはベビーバスやベビーチェアを無料で貸す。ランニングの着替え場所としても使え、受付で鍵を預けて走って戻れば、そのまま湯に入れる。[2]
蒲田から黒湯をはしごする
大田区に温泉街はなく、温泉銭湯は商店街や住宅地に散らばっている。外観や料金は一般の銭湯とほぼ同じ。大田区の特集によれば、西蒲田の改正湯は黒湯に炭酸を加えた『黒湯炭酸泉』をいち早く取り入れた老舗で、黒湯の水風呂やシルク風呂、浴槽の壁に金魚の泳ぐ水槽まである。Wikipedia の一覧には蒲田〜六郷のゆ〜シティー蒲田、照の湯、池上のはすぬま温泉や桜館など十数軒が並ぶ。色の濃さや肌ざわりは店ごとに違うので、蒲田温泉を入口にして2〜3軒を比べると、同じ黒湯でも源泉ごとに個性があることが分かる。[5][3]