電源開発が生んだ温泉街
宇奈月温泉は富山県黒部市、黒部川が山を出る河岸段丘(標高約200m)にある。黒部川の電源開発を背景に1923年(大正12年)11月22日に開湯した、比較的新しい温泉地だ。黒部峡谷の探検と発電所建設とともに発展し、いまは富山県内で最大規模、黒部峡谷鉄道のトロッコ観光の拠点でもある。『宇奈月』の名は近代の命名で、水の音や風の響きに心も『うなづき』、身も心も清らかになるという伝承と、『宇治や奈良と並ぶ名月の地』にしようという思いから付けられたという。駅前には温泉を使った噴水、公園には昭和天皇や与謝野晶子の歌碑がある。[5]
7キロの引湯管
宇奈月の源泉は、温泉街ではなく黒部川を7km上流にさかのぼった黒薙温泉にある。3・4・6・9号井と自噴泉から湧く湯は源泉段階で92〜98℃。浴用に多少の水を混ぜながら引湯し、温泉街に届くころには63℃になる。全国でも珍しい長距離の引湯で、1970年代には黒薙のさらに上流の二見からも引いていた。最初の引湯管は赤松の木管で、約1.2mの旧管が温泉街に展示されている。この管が通る土地をめぐる争いは『宇奈月温泉木管事件』として民法の判例集に載り、権利の濫用を論じる教材になった。湯は弱アルカリ性の単純温泉で無色透明、溶存物質394mg/kg、pH8.19。2024年の能登半島地震の後、メタケイ酸の含有量が10年前の3〜4倍に増えた状態が続いているという。[5]
総湯から湖畔の湯へ
日帰りの入口は宇奈月温泉駅から徒歩数分の総湯『湯めどころ宇奈月』。大人510円・小中学生250円、9:00〜22:00(受付21:00)、第4火曜と1月1日が休み。2階の『桃の湯』と3階の『月美の湯』(露天付き)を男女日替わりで使い、浴槽には黒部川の御影石を用いる。館内に観光案内所もある。宇奈月ダムの湖畔にある『とちの湯』は大人510円、10:00〜17:00(受付16:30)、12月上旬から冬季休業。温泉街のホテル・旅館も日帰りを受け付け、観光局の一覧では『やまのは』が平日1,200円・土日祝1,500円(13:00〜16:00)、延対寺荘1,000円、ホテル黒部1,100円など。足湯は駅前の『くろなぎ』と温泉街の『おもかげ』が無料で使える。[2][3]
トロッコで源泉まで
宇奈月温泉駅から歩いてすぐの黒部峡谷鉄道宇奈月駅から、トロッコ電車が峡谷を上る。黒薙までは片道大人830円(10〜11月)、鐘釣1,780円、終点の欅平2,480円。全区間運行は10月1日〜11月30日、4月20日〜9月30日は一部区間、冬は運休。黒薙駅から山道を歩くと、宇奈月の湯の源である黒薙温泉に一軒の旅館がある。開湯約150年、営業は5月1日から11月24日午前まで、一人でも泊まれ、カード類は使えず現金のみ、ドローンは禁止。宿泊は予約が要る。温泉街で入った湯が、どこから、どれほど熱く湧いているかを、列車と自分の足で確かめられる。これが宇奈月を『源泉と温泉街が離れている温泉』の見本にしている。[7][6][5]