ヒーロー: アポロ17号 シュミット飛行士と巨岩(タウラス・リトロー)

LUNAR FUSION COIL LAB

月に置く炉の、かたちを探す。

仮説を立て、磁場を計算し、形を比べ、CADまで出す。見た目だけの絵ではなく、数字で確かめながら。

無料のソフト(Python・OCCT)⁠と⁠AIだけで作った、核融合炉のかたちの研究室です。同じ芯(5コイルのミラー)を地上・月・火星・軌道上に置くと、外の気圧・熱の捨て方・手に入る燃料・遮蔽の材料で、炉の形がどう変わるかを計算しました。芯を選ぶまでの10案の比較と、計算の検証、FreeCAD⁠ で作った4つの炉の CAD モデルと寸法入りの図面もあります。

アポロ17号、タウラス・リトロー。シュミット飛行士と⁠巨岩。炉を置くのは、こういう場所です。NASA / AS17-140-21496

10案比べた配置
8.5 × 10−5検証の誤差(軸上・N=256)
42個コイルの合計
全案STEP / STL

SAME CORE, FOUR WORLDS

月だと、火星だと、炉はこう変わる

同じ芯、同じ決まり。変えたのは置く場所だけ。

10の案から選んだ5コイルのミラーを芯にして、地上・月・火星・軌道上に置く炉を、同じ決まりで自動で設計しました。形を変えるのは、外の気圧・熱の捨て方・手に入る燃料・遮蔽の材料・重力・近くの人の6つです。輸送の制約は入れていません。大きさを比べる物差しと⁠して、核融合の出力はどこも 30 MW にそろえました(出力の予測ではありません)⁠。

炉の芯の比較(4つとも同じ縮尺)。燃料と外の気圧で、遮蔽・コイル・容器・端の形が変わる。

4つの炉の概要の 3D です。仕上げの絵ではありません。場所を切り⁠替えて、断面や⁠敷地全体を見られます。

地上

海沿いの発電所(仮置き)

基準

D-T(重水素+三重水素)

1気圧に耐える厚い真空容器(28 mm)と断熱容器(41 mm)に包まれ、厚さ 2.4⁠ m⁠ のコンクリートの建屋の中に置く。熱は冷却塔へ捨て放題なので、燃やしやすい D-T を使う。そのぶん⁠中性子が多く、遮蔽と⁠増殖層が厚い。人が近いので、漏れ磁場の⁠柵(半径 37 m)⁠が要る。

1.75m中央のコイル半径
11.9m炉の全長
28mm真空容器
2区画冷却塔
STEP

月

月の南極域(仮置き)

D-³He(重水素+ヘリウム3)

真空容器と⁠断熱容器が消え、端が開いて直径 4.3⁠ m⁠ の発電器と⁠放熱フィンが生える。コイルは地上より 30% 小さい。炉は溝に寝かせて砂をかぶせ、まわりに放射器 328 m²⁠ が並ぶ。柵はいらない。

1.22m中央のコイル半径
17.2m炉の全長
なし真空容器
328m²放射器
STEP

火星

火星の中緯度・地下氷のある所(仮置き)

D-D(重水素だけ)

容器は残るが、厚さは⁠ 4 mm(地上の 1/7)。氷の重水素で D-D を燃やすので、遮蔽は地上と⁠月の間。熱の捨て場に困り、放射器が 1,117 m²(月の 3.4 倍)。炉は 3.6 m の砂の下で、柵と⁠居住区がある。

1.41m中央のコイル半径
13.0m炉の全長
4mm真空容器
1,117m²放射器
STEP

軌道上

月の周りの軌道(仮置き)

D-³He(重水素+ヘリウム3)

芯は月と⁠同じ。地面も砂もないので、人のいる方向だけを 1.2 m の影の盾で守り、60 m のトラスの先に居住区を置く。脚はいらない。放射器 153 m²⁠ をトラスに沿って広げ、発電器の⁠熱 170 m² 分はフィンから捨てる。

1.22m中央のコイル半径
17.2m炉の全長
なし真空容器
323m²放射器
STEP

形を変えた6つの条件

外の気圧

1気圧なら、⁠真空容器と⁠断熱容器は外圧に耐える殻になる。月と⁠軌道は外がすでに真空なので、端を宇宙へ開けるかを排気の速さで計算した。

熱の捨て⁠方

地上は水と⁠空気で捨て放題。宇宙は放射だけで、捨てられる熱は温度の4乗で決まる。これが燃料の選び方まで変える。

手に入る燃料

燃料が変わると⁠中性子の量が変わり、遮蔽の厚み、コイルの大きさ、炉の長さまで変わる。

遮蔽の材料

地上はコンクリート。月と⁠火星はその場の砂。軌道上にはなにもないので、人のいる方向だけを守る。

重力

芯を支える力は、電磁力のほうが重さより何十倍も大きい。重力は芯の形をほとんど変えなかった。これも計算の結果。

近くの⁠人

人が近くにいれば、漏れ磁場の柵が要る。月と⁠軌道上は要らない。

炉の芯の比較(4つとも同じ縮尺)。燃料と外の気圧で、遮蔽・コイル・容器・端の形が変わる。
炉の芯の比較(4つとも同じ縮尺)。燃料と⁠外の気圧で、遮蔽・コイル・容器・端の形が変わる。
上から見た設備の比較(4つとも同じ縮尺)。熱の捨て方・遮蔽・人の有無で、敷地の形が変わる。
上から見た設備の比較(4つとも同じ縮尺)。熱の捨て方・遮蔽・人の有無で、敷地の形が変わる。

地上と⁠比べて、ここが変わる

地上の炉を基準にして、何がどう変わったか、なぜかを並べました。数字は計算から入っています。

月

D-³He(重水素+ヘリウム3)

真空容器と⁠断熱容器が消え、端が開いて直径 4.3⁠ m⁠ の発電器と⁠放熱フィンが生える。コイルは地上より 30% 小さい。炉は溝に寝かせて砂をかぶせ、まわりに放射器 328 m²⁠ が並ぶ。柵はいらない。

月 — D-³He(重水素+ヘリウム3)
変わったもの地上ここではなぜ
真空容器28 mm の⁠殻なし外がすでに真空(1e-10 Pa)⁠。端を宇宙へ開くと、排気の速さは大型ポンプ 89 台分になる
断熱容器41 mm の⁠殻なし(多層断熱材だけ)コイルのまわりの断熱は、外の真空がしてくれる
燃料D-T(重水素+三重水素)D-³He(重水素+ヘリウム3)熱は放射でしか捨てられないので、廃熱の少ない組み合わせ(中性子の少ない D-³He+直接発電)⁠を選ぶ。³He は月の砂にある(仮説)
遮蔽と⁠増殖層遮蔽 0.54 m+増殖層 0.25⁠ m遮蔽 0.32⁠ m中性子が 1.5 MW(地上は 24 MW)。三重水素を増やす層が要らない
コイル中央の半径 1.75 m・端 8.3 MA中央の半径 1.22 m・端 6.3 MA遮蔽が薄いぶん、コイルをプラズマに近づけられる。コイル同士の力は 5.5⁠ → 2.9 MN
端閉じた端の部屋・発電器 直径 2.0 m・ポンプ 10 台開いた端・発電器 直径 4.3 m+放熱フィン 16⁠ 枚端へ出てくる荷電粒子のエネルギーが 28 MW(地上は 6 MW)。発電器の大きさは受けられる熱の流れで決まる。熱は電極から直接宇宙へ捨てる
炉の長さ11.9 m17.2 m端の発電器と⁠フィンの大きさで決まる
熱の捨て⁠方冷却塔 2 区画放射器 328 m²熱は放射でしか捨てられない。同じ場所で D-T なら 2,546 m²
外への遮蔽コンクリートの建屋 2.4 m溝+レゴリス 2.5⁠ m砂がその場にある。掘って、かぶせる
漏れ磁場の⁠柵半径 37 mなし近くに人がいない
重さ216 kN(電磁力の 1/26)18 kN(電磁力の 1/166)芯の支えを決めるのは電磁力。重力の差は芯の形をほとんど変えない
真空容器

地上: 28 mm の⁠殻

ここでは⁠: なし

外がすでに真空(1e-10 Pa)⁠。端を宇宙へ開くと、排気の速さは大型ポンプ 89 台分になる

断熱容器

地上: 41 mm の⁠殻

ここでは⁠: なし(多層断熱材だけ)

コイルのまわりの断熱は、外の真空がしてくれる

燃料

地上: D-T(重水素+三重水素)

ここでは⁠: D-³He(重水素+ヘリウム3)

熱は放射でしか捨てられないので、廃熱の少ない組み合わせ(中性子の少ない D-³He+直接発電)⁠を選ぶ。³He は月の砂にある(仮説)

遮蔽と⁠増殖層

地上: 遮蔽 0.54 m+増殖層 0.25⁠ m

ここでは⁠: 遮蔽 0.32⁠ m

中性子が 1.5 MW(地上は 24 MW)。三重水素を増やす層が要らない

コイル

地上: 中央の半径 1.75 m・端 8.3 MA

ここでは⁠: 中央の半径 1.22 m・端 6.3 MA

遮蔽が薄いぶん、コイルをプラズマに近づけられる。コイル同士の力は 5.5⁠ → 2.9 MN

端

地上: 閉じた端の部屋・発電器 直径 2.0 m・ポンプ 10 台

ここでは⁠: 開いた端・発電器 直径 4.3 m+放熱フィン 16⁠ 枚

端へ出てくる荷電粒子のエネルギーが 28 MW(地上は 6 MW)。発電器の大きさは受けられる熱の流れで決まる。熱は電極から直接宇宙へ捨てる

炉の長さ

地上: 11.9 m

ここでは⁠: 17.2 m

端の発電器と⁠フィンの大きさで決まる

熱の捨て⁠方

地上: 冷却塔⁠ 2 区画

ここでは⁠: 放射器 328 m²

熱は放射でしか捨てられない。同じ場所で D-T なら 2,546 m²

外への遮蔽

地上: コンクリートの建屋 2.4 m

ここでは⁠: 溝+レゴリス 2.5⁠ m

砂がその場にある。掘って、かぶせる

漏れ磁場の⁠柵

地上: 半径 37 m

ここでは⁠: なし

近くに人がいない

重さ

地上: 216 kN(電磁力の 1/26)

ここでは⁠: 18 kN(電磁力の 1/166)

芯の支えを決めるのは電磁力。重力の差は芯の形をほとんど変えない

火星

D-D(重水素だけ)

容器は残るが、厚さは⁠ 4 mm(地上の 1/7)。氷の重水素で D-D を燃やすので、遮蔽は地上と⁠月の間。熱の捨て場に困り、放射器が 1,117 m²(月の 3.4 倍)。炉は 3.6 m の砂の下で、柵と⁠居住区がある。

火星 — D-D(重水素だけ)
変わったもの地上ここではなぜ
真空容器28 mm の⁠殻4 mm の⁠殻外の気圧が地球の 0.6% なので、外圧に耐える殻は薄くてよい
断熱容器41 mm の⁠殻6 mm の⁠殻外圧が小さいので薄い殻で足りる
燃料D-T(重水素+三重水素)D-D(重水素だけ)地下の氷から重水素がとれる(火星の水は重水素が地球の約5倍)。三重水素を増や⁠さずに済む D-D を選ぶ
遮蔽と⁠増殖層遮蔽 0.54 m+増殖層 0.25⁠ m遮蔽 0.48⁠ m中性子が 11.4 MW(地上は 24 MW)。三重水素を増やす層が要らない
コイル中央の半径 1.75 m・端 8.3 MA中央の半径 1.41 m・端 7.7 MA遮蔽が薄いぶん、コイルをプラズマに近づけられる。コイル同士の力は 5.5⁠ → 4.1 MN
端閉じた端の部屋・発電器 直径 2.0 m・ポンプ 10 台閉じた端の部屋・発電器 直径 3.4 m・ポンプ 10 台端へ出てくる荷電粒子のエネルギーが 19 MW(地上は 6 MW)。発電器の大きさは受けられる熱の流れで決まる
炉の長さ11.9 m13.0 m端の発電器と⁠フィンの大きさで決まる
熱の捨て⁠方冷却塔 2 区画放射器 1,117 m²熱は放射でしか捨てられない。同じ場所で D-T なら 2,160 m²。薄い大気の風が 16% を助ける
外への遮蔽コンクリートの建屋 2.4 m溝+レゴリス 3.6⁠ m砂がその場にある。掘って、かぶせる
漏れ磁場の⁠柵半径 37 m半径 33 m基地の人を守る
重さ216 kN(電磁力の 1/26)62 kN(電磁力の 1/65)芯の支えを決めるのは電磁力。重力の差は芯の形をほとんど変えない
真空容器

地上: 28 mm の⁠殻

ここでは⁠: 4 mm の⁠殻

外の気圧が地球の 0.6% なので、外圧に耐える殻は薄くてよい

断熱容器

地上: 41 mm の⁠殻

ここでは⁠: 6 mm の⁠殻

外圧が小さいので薄い殻で足りる

燃料

地上: D-T(重水素+三重水素)

ここでは⁠: D-D(重水素だけ)

地下の氷から重水素がとれる(火星の水は重水素が地球の約5倍)。三重水素を増や⁠さずに済む D-D を選ぶ

遮蔽と⁠増殖層

地上: 遮蔽 0.54 m+増殖層 0.25⁠ m

ここでは⁠: 遮蔽 0.48⁠ m

中性子が 11.4 MW(地上は 24 MW)。三重水素を増やす層が要らない

コイル

地上: 中央の半径 1.75 m・端 8.3 MA

ここでは⁠: 中央の半径 1.41 m・端 7.7 MA

遮蔽が薄いぶん、コイルをプラズマに近づけられる。コイル同士の力は 5.5⁠ → 4.1 MN

端

地上: 閉じた端の部屋・発電器 直径 2.0 m・ポンプ 10 台

ここでは⁠: 閉じた端の部屋・発電器 直径 3.4 m・ポンプ 10 台

端へ出てくる荷電粒子のエネルギーが 19 MW(地上は 6 MW)。発電器の大きさは受けられる熱の流れで決まる

炉の長さ

地上: 11.9 m

ここでは⁠: 13.0 m

端の発電器と⁠フィンの大きさで決まる

熱の捨て⁠方

地上: 冷却塔⁠ 2 区画

ここでは⁠: 放射器 1,117 m²

熱は放射でしか捨てられない。同じ場所で D-T なら 2,160 m²。薄い大気の風が 16% を助ける

外への遮蔽

地上: コンクリートの建屋 2.4 m

ここでは⁠: 溝+レゴリス 3.6⁠ m

砂がその場にある。掘って、かぶせる

漏れ磁場の⁠柵

地上: 半径 37 m

ここでは⁠: 半径 33 m

基地の人を守る

重さ

地上: 216 kN(電磁力の 1/26)

ここでは⁠: 62 kN(電磁力の 1/65)

芯の支えを決めるのは電磁力。重力の差は芯の形をほとんど変えない

軌道上

D-³He(重水素+ヘリウム3)

芯は月と⁠同じ。地面も砂もないので、人のいる方向だけを 1.2 m の影の盾で守り、60 m のトラスの先に居住区を置く。脚はいらない。放射器 153 m²⁠ をトラスに沿って広げ、発電器の⁠熱 170 m² 分はフィンから捨てる。

軌道上 — D-³He(重水素+ヘリウム3)
変わったもの地上ここではなぜ
真空容器28 mm の⁠殻なし外がすでに真空(1e-12 Pa)⁠。端を宇宙へ開くと、排気の速さは大型ポンプ 89 台分になる
断熱容器41 mm の⁠殻なし(多層断熱材だけ)コイルのまわりの断熱は、外の真空がしてくれる
燃料D-T(重水素+三重水素)D-³He(重水素+ヘリウム3)放射でしか熱を捨てられず、遮蔽の材料も運ぶしかない。中性子の少ない D-³He を選ぶ
遮蔽と⁠増殖層遮蔽 0.54 m+増殖層 0.25⁠ m遮蔽 0.32⁠ m中性子が 1.5 MW(地上は 24 MW)。三重水素を増やす層が要らない
コイル中央の半径 1.75 m・端 8.3 MA中央の半径 1.22 m・端 6.3 MA遮蔽が薄いぶん、コイルをプラズマに近づけられる。コイル同士の力は 5.5⁠ → 2.9 MN
端閉じた端の部屋・発電器 直径 2.0 m・ポンプ 10 台開いた端・発電器 直径 4.3 m+放熱フィン 16⁠ 枚端へ出てくる荷電粒子のエネルギーが 28 MW(地上は 6 MW)。発電器の大きさは受けられる熱の流れで決まる。熱は電極から直接宇宙へ捨てる
炉の長さ11.9 m17.2 m端の発電器と⁠フィンの大きさで決まる
熱の捨て⁠方冷却塔 2 区画放射器 323 m²熱は放射でしか捨てられない。同じ場所で D-T なら 2,482 m²
外への遮蔽コンクリートの建屋 2.4 m影の⁠盾 1.2 m(人の方向だけ)地面も砂もない。人のいる方向だけを守る
漏れ磁場の⁠柵半径 37 mなし近くに人がいない
重さ216 kN(電磁力の 1/26)0(脚なし)芯の支えを決めるのは電磁力。重力の差は芯の形をほとんど変えない
真空容器

地上: 28 mm の⁠殻

ここでは⁠: なし

外がすでに真空(1e-12 Pa)⁠。端を宇宙へ開くと、排気の速さは大型ポンプ 89 台分になる

断熱容器

地上: 41 mm の⁠殻

ここでは⁠: なし(多層断熱材だけ)

コイルのまわりの断熱は、外の真空がしてくれる

燃料

地上: D-T(重水素+三重水素)

ここでは⁠: D-³He(重水素+ヘリウム3)

放射でしか熱を捨てられず、遮蔽の材料も運ぶしかない。中性子の少ない D-³He を選ぶ

遮蔽と⁠増殖層

地上: 遮蔽 0.54 m+増殖層 0.25⁠ m

ここでは⁠: 遮蔽 0.32⁠ m

中性子が 1.5 MW(地上は 24 MW)。三重水素を増やす層が要らない

コイル

地上: 中央の半径 1.75 m・端 8.3 MA

ここでは⁠: 中央の半径 1.22 m・端 6.3 MA

遮蔽が薄いぶん、コイルをプラズマに近づけられる。コイル同士の力は 5.5⁠ → 2.9 MN

端

地上: 閉じた端の部屋・発電器 直径 2.0 m・ポンプ 10 台

ここでは⁠: 開いた端・発電器 直径 4.3 m+放熱フィン 16⁠ 枚

端へ出てくる荷電粒子のエネルギーが 28 MW(地上は 6 MW)。発電器の大きさは受けられる熱の流れで決まる。熱は電極から直接宇宙へ捨てる

炉の長さ

地上: 11.9 m

ここでは⁠: 17.2 m

端の発電器と⁠フィンの大きさで決まる

熱の捨て⁠方

地上: 冷却塔⁠ 2 区画

ここでは⁠: 放射器 323 m²

熱は放射でしか捨てられない。同じ場所で D-T なら 2,482 m²

外への遮蔽

地上: コンクリートの建屋 2.4 m

ここでは⁠: 影の⁠盾 1.2 m(人の方向だけ)

地面も砂もない。人のいる方向だけを守る

漏れ磁場の⁠柵

地上: 半径 37 m

ここでは⁠: なし

近くに人がいない

重さ

地上: 216 kN(電磁力の 1/26)

ここでは⁠: 0(脚なし)

芯の支えを決めるのは電磁力。重力の差は芯の形をほとんど変えない

数字で並べる
項目地上月火星軌道上
燃料D-TD-³HeD-DD-³He
中性子⁠ / 荷電粒子(30 MW のうち)24.0 / 6.0 MW1.5 / 28.5 MW11.4 / 18.6 MW1.5 / 28.5 MW
内側の遮蔽(+増殖層)0.54+0.25 m0.32 m0.48 m0.32 m
中央のコイル半径⁠ / 端の電流1.75 m / 8.3 MA1.22 m / 6.3 MA1.41 m / 7.7 MA1.22 m / 6.3 MA
コイル同士の力(最大)5.5 MN2.9 MN4.1 MN2.9 MN
真空容器⁠ / 断熱容器28 / 41 mmなし / なし4 / 6 mmなし / なし
端閉じる⁠・発電器 2.0 m・ポンプ 10開く⁠・発電器 4.3⁠ m閉じる⁠・発電器 3.4 m・ポンプ 10開く⁠・発電器 4.3⁠ m
炉の全長11.9 m17.2 m13.0 m17.2 m
熱の捨て⁠方冷却塔 2 区画放射器 328 m²放射器 1,117 m²放射器 323 m²
外への遮蔽建屋 2.4 m溝+砂 2.5⁠ m溝+砂 3.6⁠ m影の盾 1.2 m
重さ / 電磁力216 kN(1/26)18 kN(1/166)62 kN(1/65)0
漏れ磁場の⁠柵半径 37 mなし半径 33 mなし

わかったこと

  1. 月で形をいちばん大きく変えたのは「熱の捨て方」でした。放射でしか捨てられないので、廃熱の少ない燃料と⁠発電の組み合わせを選ぶと、放射器は 328 m²⁠ で済みます。同じ月で D-T を燃やすと⁠ 2,546 m² です。
  2. 外の真空は、⁠真空容器と⁠断熱容器を要らなくしました。端を宇宙へ開くと、排気の速さは大型ポンプ 89 台分になります。
  3. 燃料が変わると、芯の大きさが変わります。中性子の少ない月の炉は、遮蔽が薄いぶんコイルが地上より 30% 小さく、端には直径 4.3⁠ m⁠ の発電器が開きます。
  4. 火星は大気が薄すぎて冷却塔が使えません。D-D の熱で放射器が 1,117 m²⁠ に広がります。真空容器は残りますが、厚さは⁠ 4 mm です。
  5. 重力の違いは、芯の形をほとんど変えませんでした。芯を支えるのは電磁力で、地上でも重さの 26 倍あります。
  6. 軌道上の芯は月と⁠同じです。違うのは、地面も砂もないので、1.2 m の影の盾と⁠ 60 m のトラスで人を守ることです。

FreeCAD⁠ で作った CAD と図面

4つの炉を FreeCAD⁠ で組み立てました。図面は、FreeCAD⁠ が CAD モデルから描いた投影と⁠断面に、計算で決めた寸法を入れたものです。FCStd は FreeCAD⁠ でそのまま開けます。

まだ確かめていないこと

  • 燃料の燃えやすさ(温度と閉じ込め)。D-³He と D-D は、D-T よりずっと⁠燃やしにくい。
  • 核融合の出力 30 MW⁠ は大きさを比べる物差し。出力の予測ではない。
  • 放熱の面積は熱の収支と⁠放射の式、遮蔽の厚みは1/10価層の目安と⁠減らす桁数から出した一次の目安。詳しい熱と⁠中性子の計算では確かめていない。
  • 直接発電の効率、放射器の温度、冷却塔1区画の大きさは仮置き。
  • 月の砂のヘリウム3の量と⁠採り方、火星の氷の重水素の採り方。

4つの炉を持ち帰る

FreeCAD⁠ の元ファイル(FCStd)⁠・STEP(部品名つき・mm)⁠・寸法の JSON。

WHAT THIS IS

このサイトでわかること

01

コイルの置き方で磁場はどう変わるか

間隔・半径・傾き・電流の向き・数。1つずつ変えて、基準と⁠同じ条件で並べました。

02

その計算は信用できるか

新しい形を探す前に、1つの円形コイルの磁場を解析式と⁠突き合わせ、誤差と⁠収束を数字で示しています。

03

月面で何が効くか

重力・排熱・輸送質量・遮蔽・保守・電源。それぞれがコイル配置のどの変数に効くかを整理しました。

オルドリン飛行士(アポロ11号)
NASA / AS11-40-5903

HOW IT WORKS

仮説から CAD まで、1本の流れ

01

仮説

コイルの半径・位置・向き・電流を数字で決める。変える理由と⁠期待も一緒に書いておく。

02

計算

ビオ・サバール則(細線電流・折れ線近似)⁠で磁場を出す。断面の |B|、軸上の分布、磁力線(4次ルンゲ・クッタ)⁠。

03

比較

基準と⁠同じ格子・同じ色の尺度で並べる。ミラー比・一様さ・導体表面の磁場・コイル間の力・導体の量・漏れ磁場。

04

CAD

同じ数字から CAD の形(STEP)を作る。計算は m、CAD は mm。換算は1か所だけで行う。

VALIDATION FIRST

まず、計算が合っているかを確かめる

半径 1 m・電流⁠ 1 MA⁠ の円形コイル1つ。軸の上の磁場には教科書の式があります。折れ線の本数 N を増やしながら、その式と⁠比べました。

B_z(z) = μ₀ I R² / 2 (R² + z²)^{3/2}

まず、計算が合っているかを確かめる
軸上
分割数 N と最大相対誤差(軸上・z = −3〜+3 m・241点)
分割数 N と最大相対誤差(軸上・⁠z⁠ = −3〜+3 m・241点)
-2.00N を2倍にすると⁠誤差は約4分の1。2次収束。N=256 で相対誤差は1万分の1以下。
8.5 × 10−5検証の誤差(軸上・N=256)

軸上

N を2倍にすると⁠誤差は約4分の1。2次収束。N=256 で相対誤差は1万分の1以下。

軸外

完全楕円積分の厳密解とも比べました。導体から離れた点では同じ精度。導体のそばほど誤差が大きい(折れ線の1辺の長さ ÷ 距離の2乗で効く)。

特異点

導体の中心線から太さ(tube)の内側は NaN にして塗りません。細線近似はそこでは意味を持たないからです。

単位

計算は m・A・T。CAD は mm。変換はコードの1か所だけ。

分割数 N と最大相対誤差(軸上・⁠z⁠ = −3〜+3 m・241点)
分割数 N最大相対誤差中心の相対誤差秒
88.63 × 10−25.48 × 10−20.00
162.18 × 10−21.31 × 10−20.00
325.46 × 10−33.23 × 10−30.00
641.37 × 10−38.04 × 10−40.01
1283.41 × 10−42.01 × 10−40.02
2568.53 × 10−55.02 × 10−50.04
5122.13 × 10−51.26 × 10−50.07
10245.33 × 10−63.14 × 10−60.14
軸外の厳密解との比較
分割数 NBz の相対誤差Bρ の相対誤差遠い点の Bz遠い点の Bρ
641.15 × 10−18.54 × 10−37.83 × 10−25.54 × 10−3
2567.22 × 10−35.37 × 10−44.91 × 10−33.48 × 10−4
10244.51 × 10−43.36 × 10−53.07 × 10−42.17 × 10−5
導体のすぐそば。tube(導体半径 0.04 m)より内側は計算しない。
距離÷ tube計算厳密解相対誤差
0.000 m0.00塗らない——
0.020 m0.50塗らない-9.408—
0.040 m0.99塗らない-4.533—
0.040 m1.01-4.429-4.4351.4 × 10−3
0.080 m2.00-2.059-2.0617.3 × 10−4
0.200 m5.00-0.669-0.6693.5 × 10−4
0.400 m10.00-0.253-0.2532.1 × 10−4

この検証は「ビオ・サバール則の実装が正しい」ことを示すだけです。細線近似そのものの限界(導体の太さ・電流分布)は残ります。4つの環境の炉で使った放熱・遮蔽・容器の厚みの式は、教科書の式と⁠仮置きの数字による一次の目安で、ここでは確かめていません。

THE BASELINE

基準の炉は、いちばん部品が少ない形から

同じ向きの円形コイルを2つ。半径 1 m、間隔 2 m、各 2 MA。両端で磁場が強く、真ん中で弱い「磁気ミラー」です。部品が少なく、軸が1本で支えやすく、月面に横倒しで置けば三方をレゴリスで覆えます。すべての比較は、この配置を基準(=1)にしています。

基準・単純ミラー(2コイル) 3D表示の代替画像

3D表示

  • 断面図: 色は |B| の強さ(対数)。白い線は磁力線。銅色の丸は導体の断面。
  • 軸上の分布: 中央で弱く、コイルの面で最も強い。その比がミラー比。
  • 3D: コイルを回して見られます。青い線は中央の面から出発した磁力線。
基準・単純ミラー(2コイル) 断面の |B| と磁力線
断面の |B| と磁力線
基準・単純ミラー(2コイル) 軸上の |B|
軸上の |B|

基準の数字(今回の比較条件)

0.889T中心の磁場
1.372T軸上の最大(コイルの面)
1.54ミラー比(軸上)
1.98ミラー比(磁力線に沿って・中央値)
53.6°ロスコーン角
1.7%中心の一様さ(半径 0.1⁠ R⁠ の球・ばらつき)
7.4T導体表面の最大磁場
0.61MNコイル間の力(最大)
17.0MJ箱の中の磁場エネルギー
12.6m導体の長さ
1.14t導体の質量の目安
24mT漏れ磁場(中心から 5 m)

TEN SHAPES

10の案。1つずつ変えて、同じ物差しで

基準から「間隔」「半径」「傾き」「電流の向き」「数」を1つず⁠つ動かした案と、形の違う双極子・トロイダル配置。各案に、変えた理由と⁠仮説、計算で確認できたこと、悪くなった点、未検証の課題、次に要る解析を書きました。

間隔を半径に(ヘルムホルツ配置)

変えたもの⁠: 間隔 2.0⁠ m⁠ → 1.0⁠ m
間隔を半径に(ヘルムホルツ配置) 3D表示の代替画像

コイルと⁠磁力線(3D)

間隔を半径に(ヘルムホルツ配置) 基準(左)と比べる(中)・差(右)
基準(左)と⁠比べる(中)・差(右)
間隔を半径に(ヘルムホルツ配置) 軸上の |B|
軸上の |B|

仮説

2コイルの間隔を半径と⁠同じにすると⁠中心の磁場が最も一様になる(ヘルムホルツ条件)⁠。ミラー比は下がるはず。

理由

「間隔」と⁠いう1つの変数だけを動かして、一様さと⁠ミラー比のトレードオフを見る。

1.798 T中心の磁場
1.06ミラー比(軸上)
2.87 MNコイル間の力(最大)
12.6 m導体の長さ
7.6 T導体表面の最大磁場

計算で確認できたこと

  • 間隔 = 半径にすると、中心のばらつきは 1.7%⁠ → 0.01%。中心の磁場は 0.89⁠ → 1.80⁠ T(2倍)⁠。
  • 軸上のミラー比は 1.54⁠ → 1.06。ロスコーン角は 54°⁠ → 77°(ほとんど閉じ込めにならない)。
  • コイルが近いぶん引き合う力は 0.61⁠ → 2.87 MN(4.7倍)⁠。支持構造はこちらのほうが重い。
  • 導体の長さ・質量は基準と⁠同じ。

悪化した点・トレードオフ

  • ミラー比がほぼ消える(粒子を両端で跳ね返せない)。
  • コイル間の力が 4.7 倍。

未検証の課題

  • 一様な磁場の中でのプラズマの振る舞い(ここでは何も言えない)。

次に必要な解析

  • 間隔を 1.0⁠ 〜 2.0⁠ m⁠ の間で振って、一様さと⁠ミラー比の曲線を描く(触って動かす欄で試せる)。

今回の比較条件での見立て

中心の一様さは 0.01% と桁違いに良いが、ミラー比はほぼ 1。閉じ込めの磁場ではなく「一様な磁場を作る」配置。基準計算や⁠校正には向く。

基準=1 としたとき

2.02×中心の磁場
0.68×ミラー比(軸上)
4.70×コイル間の力(最大)
1.00×導体の長さ
1.00×導体の質量の目安

間隔を広げたミラー

変えたもの⁠: 間隔 2.0⁠ m⁠ → 3.0⁠ m
間隔を広げたミラー 3D表示の代替画像

コイルと⁠磁力線(3D)

間隔を広げたミラー 基準(左)と比べる(中)・差(右)
基準(左)と⁠比べる(中)・差(右)
間隔を広げたミラー 軸上の |B|
軸上の |B|

仮説

間隔を広げると⁠中央の磁場が弱まりミラー比は上がる。体積は増えるが、中央の磁場が弱すぎると⁠意味がない。

理由

基準と⁠逆向きに間隔を振って、ミラー比・中心磁場・コイル間の力がどう変わるかを見る。

0.429 T中心の磁場
3.02ミラー比(軸上)
0.18 MNコイル間の力(最大)
12.6 m導体の長さ
7.4 T導体表面の最大磁場

計算で確認できたこと

  • 間隔⁠ 2⁠ →⁠ 3⁠ m で、軸上のミラー比 1.54⁠ → 3.02、ロスコーン角 54°⁠ → 35°。
  • 中心の磁場は 0.89⁠ → 0.43⁠ T(半分以下)⁠。コイルの面では 1.30 T。
  • 引き合う力は 0.61⁠ → 0.18 MN(1/3)⁠。離すほど力は減る。
  • 導体の長さ・質量は基準と⁠同じ。

悪化した点・トレードオフ

  • 中心の磁場が弱い。同じ磁場を得るには電流を 2 倍以上にする必要があり、導体表面の磁場も力も増える。

未検証の課題

  • 弱い中心磁場で粒子の軌道半径がどこまで大きくなるか。

次に必要な解析

  • 電流を上げて中心磁場を基準と⁠同じにしたときの力・導体表面の磁場を比べる。

今回の比較条件での見立て

ミラー比は 3.0 まで上がるが、中心の磁場が 0.43⁠ T⁠ に落ちる。同じ電流で「体積を取るか、磁場を取るか」の典型。

基準=1 としたとき

0.48×中心の磁場
1.96×ミラー比(軸上)
0.30×コイル間の力(最大)
1.00×導体の長さ
1.00×導体の質量の目安

端のコイルを小さく(半径 1.0⁠ → 0.6 m)

変えたもの⁠: 半径 1.0⁠ m⁠ → 0.6⁠ m 今回の条件で有望
端のコイルを小さく(半径 1.0 → 0.6 m) 3D表示の代替画像

コイルと⁠磁力線(3D)

端のコイルを小さく(半径 1.0 → 0.6 m) 基準(左)と比べる(中)・差(右)
基準(左)と⁠比べる(中)・差(右)
端のコイルを小さく(半径 1.0 → 0.6 m) 軸上の |B|
軸上の |B|

仮説

同じ電流なら半径が小さいほどコイルの中心の磁場は強い(B⁠ ∝ I/R)。端の磁場が上がりミラー比が増えるはず。導体の長さも減る。

理由

「半径」だけを動かす。輸送質量(導体の長さ)を減らしながらミラー比を稼げるかを見る。

0.570 T中心の磁場
3.76ミラー比(軸上)
0.13 MNコイル間の力(最大)
7.5 m導体の長さ
7.9 T導体表面の最大磁場

計算で確認できたこと

  • 半径 1.0⁠ → 0.6⁠ m で、コイルの面の磁場 1.37⁠ → 2.14 T、軸上のミラー比 1.54⁠ → 3.76、ロスコーン角 54°⁠ → 31°。
  • 中心の磁場は 0.89⁠ → 0.57⁠ T(小さいコイルは遠くまで届かない)。
  • 引き合う力は 0.61⁠ → 0.13 MN。導体の長さは 12.6⁠ → 7.5 m、質量の目安 1.1⁠ → 0.68 t。
  • 導体表面の最大は 7.4⁠ → 7.9⁠ T(同じ電流でコイルが小さいので少し上がる)。
  • 磁力線に沿ったミラー比は中央値 4.5(基準 2.0)⁠。漏れ磁場は 5 m で 8.9 mT(基準 24 mT)⁠と小さい。

悪化した点・トレードオフ

  • 中心の磁場が 0.57⁠ T⁠ に下がる。
  • コイルの⁠穴(半径 0.6 m)⁠が小さく、中を通す容器・加熱装置・排気の口が狭くなる。

未検証の課題

  • 半径 0.6⁠ m⁠ の穴に容器が収まるか(設備全体の形)。

次に必要な解析

  • 半径を 0.5⁠ 〜 1.0⁠ m⁠ で振り、ミラー比・中心磁場・導体の長さの3つを1枚の図にする。
  • 中央に弱いコイルを足して中心磁場を戻す(→ 5コイル)。

今回の比較条件での見立て

2コイルのままミラー比 3.8。導体は 7.5 m(基準の 6 割)、質量の目安 0.68 t、力は 0.13 MN。今回の条件で、運ぶ質量あたりの性能が最も良い候補。

基準=1 としたとき

0.64×中心の磁場
2.44×ミラー比(軸上)
0.21×コイル間の力(最大)
0.60×導体の長さ
0.60×導体の質量の目安

コイルを傾けたミラー(±15°)

変えたもの⁠: 傾き 0°⁠ → ±15°(x軸まわり・互い違い⁠)
コイルを傾けたミラー(±15°) 3D表示の代替画像

コイルと⁠磁力線(3D)

コイルを傾けたミラー(±15°) 基準(左)と比べる(中)・差(右)
基準(左)と⁠比べる(中)・差(右)
コイルを傾けたミラー(±15°) 軸上の |B|
軸上の |B|

仮説

2つのコイルを互い違いに傾けると⁠軸対称が崩れ、磁力線がねじれる。ねじれは閉じ込めに効くことがあるが、細線近似の磁力線だけでは良し悪しは判断できない。

理由

「傾き」だけを動かす。円形コイルのまま非対称性を作れるか、磁力線と⁠力がどう変わるかを見る。

0.916 T中心の磁場
1.50ミラー比(軸上)
0.64 MNコイル間の力(最大)
12.6 m導体の長さ
7.5 T導体表面の最大磁場

計算で確認できたこと

  • ±15° 傾けても、中心の磁場 0.92 T・軸上のミラー比 1.50・⁠力 0.64 MN⁠ は基準(0.89 T・1.54・0.61 MN)⁠とほぼ同じ。
  • 中心の球のばらつきは 1.7%⁠ → 6.0%。磁場の向きが場所で変わるぶん一様さは落ちる。
  • y-z 断面で、絞り(のど)の位置が上下で逆側へずれ、磁力線が S 字にねじれる。

悪化した点・トレードオフ

  • 一様さが 3.5 倍悪くなる。
  • 力に横向きの成分と⁠ねじりが加わり、支持が面倒になる。

未検証の課題

  • ねじれた磁力線で粒子の閉じ込めが良くなるか悪くなるか(磁力線の絵からは判断しない)。

次に必要な解析

  • 粒子軌道(案内中心)⁠を追って、傾きの角度ごとに損失の割合を比べる。
  • 傾きの角度を 0〜30° で振る。

今回の比較条件での見立て

円形コイルのまま軸対称を崩せることは確認できたが、今回の数字(磁場の大きさ・ミラー比・力)は基準と⁠ほぼ同じで、良くなった量は見つからなかった。ねじれの効果は粒子軌道を解かないと⁠分からない。

基準=1 としたとき

1.03×中心の磁場
0.97×ミラー比(軸上)
1.05×コイル間の力(最大)
1.00×導体の長さ
1.00×導体の質量の目安

カスプ(電流を逆向きに⁠)

変えたもの: 片方の電流の向きを反転
カスプ(電流を逆向きに) 3D表示の代替画像

コイルと⁠磁力線(3D)

カスプ(電流を逆向きに) 基準(左)と比べる(中)・差(右)
基準(左)と⁠比べる(中)・差(右)
カスプ(電流を逆向きに) 軸上の |B|
軸上の |B|

仮説

2コイルの電流を逆向きにすると⁠中心で磁場がゼロになり、外へ行くほど強くなる「最小B」配置になる。磁気流体の不安定には強いが、中心と⁠赤道面の隙間(カスプ)から粒子が逃げやすい。

理由

ミラーと⁠同じ部品数で性質が正反対の配置。宇宙では構造が単純な配置ほど有利なので比較に入れた。

0.000 T中心の磁場
—ミラー比(軸上)
0.61 MNコイル間の力(最大)
12.6 m導体の長さ
7.3 T導体表面の最大磁場

計算で確認できたこと

  • 中心の |B| は 0(軸上のミラー比は定義できない)。半径方向・軸方向のどちらへ出ても |B| は増える(磁気井戸)。
  • 磁力線は中心付近で急に曲がり、赤道面(リングカスプ)⁠と⁠軸(ポイントカスプ)から外へ抜ける。
  • 2つのコイルは 0.61 MN⁠ で反発する(基準は引き合う)。支持構造は引張材になる。
  • 導体表面の最大は 7.3 T、導体の長さ・質量は基準と⁠同じ。漏れ磁場は 5 m で 12 mT(基準 24 mT・2つのコイルの磁場が遠方で打ち消し合う)。

悪化した点・トレードオフ

  • 中心に磁場がない。リングカスプと⁠ポイントカスプが粒子の出口になる。

未検証の課題

  • カスプの隙間の実効的な幅(粒子の軌道半径で決まる)。

次に必要な解析

  • 粒子軌道でカスプからの損失を見積もる。
  • ミラーの外側にカスプを足す「ミラー+カスプ」の組み合わせ。

今回の比較条件での見立て

中心で磁場がゼロ、外へ行くほど強くなる「最小B」。磁気流体の不安定には強い形だが、中心と⁠赤道面の隙間から磁力線が外へ抜ける。炉の中心部ではなく、周辺の安定化に使う形。

基準=1 としたとき

0.00×中心の磁場
—ミラー比(軸上)
1.00×コイル間の力(最大)
1.00×導体の長さ
1.00×導体の質量の目安

5コイルのミラー(中央を一様に⁠・端を強く⁠)

変えたもの⁠: コイル数⁠ 2⁠ →⁠ 5(中央3つは弱く・端2つは小さく強く⁠) 今回の条件で有望
5コイルのミラー(中央を一様に・端を強く) 3D表示の代替画像

コイルと⁠磁力線(3D)

5コイルのミラー(中央を一様に・端を強く) 基準(左)と比べる(中)・差(右)
基準(左)と⁠比べる(中)・差(右)
5コイルのミラー(中央を一様に・端を強く) 軸上の |B|
軸上の |B|

仮説

中央に弱いコイルを並べて長い一様な区間を作り、端に小さく強いコイルを置いてミラー比を稼ぐ。実験装置のミラー(タンデムミラー型)⁠の基本形。

理由

部品は増えるが、中央の一様な体積と⁠ミラー比を両立できるか。質量(導体の長さ)と⁠力がどれだけ増えるかを見る。

1.180 T中心の磁場
2.90ミラー比(軸上)
1.16 MNコイル間の力(最大)
26.4 m導体の長さ
10.7 T導体表面の最大磁場

計算で確認できたこと

  • 中央 3 コイル(0.8 MA)⁠で中心 1.18 T・ばらつき 0.04%。端の小さなコイル(0.6 m・3 MA)⁠で面の磁場 3.42 T、ミラー比 2.90、ロスコーン角 36°。
  • 導体表面の最大は 10.7 T(端のコイル)。高温超電導の実用域に入る。
  • 最大の力は 1.16 MN(端のコイルが内側へ引かれる)。
  • 導体 26.4⁠ m(基準の 2.1 倍)、質量の目安 2.1 t。
  • 磁力線に沿ったミラー比は中央値 3.3(基準 2.0)⁠。漏れ磁場は 5 m で 34 mT(基準 24 mT)⁠。

悪化した点・トレードオフ

  • 部品が 5 個。輸送と⁠組立の手数は 2.5 倍。
  • 端のコイルの導体表面が 10.7⁠ T⁠ と高い。
  • 力が基準の 1.9 倍。

未検証の課題

  • 端のコイルの⁠穴(半径 0.6 m)⁠の中を通す容器と⁠排気の設計。
  • 中央区間の長さと⁠一様さの関係(コイルの数を増やすと⁠どうなるか)。

次に必要な解析

  • この案を芯にして、容器・支柱・冷却・放射器・遮蔽まで含めた炉全体を設計した(ページ先頭の「生まれた炉」)。
  • 端のコイルの電流と⁠半径を振って、導体表面⁠ 8⁠ T 以下でミラー比 3 を保てる点を探す。
  • 支持構造の一次計算(端のコイルが受ける 1.2 MN)。

今回の比較条件での見立て

中央 1.6⁠ m⁠ の区間がほぼ一様(ばらつき 0.04%)で、ミラー比 2.9。部品は 5 個に増え、導体 26 m・質量の目安 2.1 t・⁠力 1.16 MN。「一様な中央⁠ × 強い端」を両立する、今回の条件で有望な候補。

基準=1 としたとき

1.33×中心の磁場
1.88×ミラー比(軸上)
1.89×コイル間の力(最大)
2.10×導体の長さ
1.86×導体の質量の目安

単一コイルの双極子

変えたもの⁠: コイル数⁠ 2⁠ →⁠ 1(半径 1.5 m・電流 4 MA)
単一コイルの双極子 3D表示の代替画像

コイルと⁠磁力線(3D)

単一コイルの双極子 基準(左)と比べる(中)・差(右)
基準(左)と⁠比べる(中)・差(右)
単一コイルの双極子 軸上の |B|
軸上の |B|

仮説

地球や⁠木星の磁気圏と⁠同じ形。コイル1つなので部品が最も少ない。地上では浮かせる必要があったが、宇宙や⁠月面では支柱で支えればよい。磁力線はコイルの外側を大きく回る。

理由

「コイルの数を最小にする」極端な案。磁場の形がまったく違うので、同じ数字で比べると⁠何が違うかを示す。

1.676 T中心の磁場
2.83ミラー比(軸上)
0.00 MNコイル間の力(最大)
9.4 m導体の長さ
10.9 T導体表面の最大磁場

計算で確認できたこと

  • コイルの中心で 1.68 T、半径 1.5⁠ m⁠ のリングの外側で地球の磁気圏と⁠同じ形の閉じた磁力線(打ち切り理由「閉じた」)。
  • コイルが 1 つなので他のコイルからの力は 0(自分の磁場で外へ広がるフープ力だけ)。
  • 導体 9.4 m(基準の 3/4)。ただし半径が大きいぶん導体表面は 10.9 T、質量の目安 1.5 t(tube 0.08⁠ m⁠ のため)。
  • 漏れ磁場は原点から 5 m で 40 mT、10 m で 5.5 mT(基準の 2 倍近く)。磁気モーメントが大きいぶん遠くまで届く。
  • 磁力線に沿ったミラー比は中央値 16(赤道面で弱く、コイルのそばで急に強くなる)。

悪化した点・トレードオフ

  • 磁力線がすべてコイルに戻る。粒子はコイルの表面に当たる。
  • 遠くまで磁場が漏れる。
  • フープ力(自分の磁場)は計算していないが、1 つの大きなコイルに集中する。

未検証の課題

  • 磁力線に沿ったミラー比(コイル近くで磁場が急に強くなる⁠)⁠で粒子がどれだけ跳ね返るか。
  • コイルを支える支柱が磁力線を横切ることの影響。

次に必要な解析

  • 磁力線に沿った |B| の分布と、赤道面の半径ごとのミラー比。
  • フープ応力の一次計算。

今回の比較条件での見立て

コイル 1 つ。地球の磁気圏と⁠同じ形で、磁力線はコイルの外側を大きく回って閉じる。部品は最少だが、磁力線はすべてコイルに戻るので、コイルの表面が粒子の壁になる。宇宙での支持は地上(浮上)より簡単。

基準=1 としたとき

1.89×中心の磁場
1.83×ミラー比(軸上)
0.00×コイル間の力(最大)
0.75×導体の長さ
1.33×導体の質量の目安

トロイダル配置・8コイル

変えたもの: コイル数 8(大半径 2.0 m・コイル半径 0.7 m・合計アンペア・ターンは同じ⁠)
トロイダル配置・8コイル 3D表示の代替画像

コイルと⁠磁力線(3D)

トロイダル配置・8コイル 基準(左)と比べる(中)・差(右)
基準(左)と⁠比べる(中)・差(右)
トロイダル配置・8コイル 軸上の |B|
軸上の |B|

仮説

円環の上に円形コイルを並べると、環の方向の磁場(トロイダル磁場)⁠ができる。コイルが少ないほど輸送質量は減るが、コイルの間で磁場が波打つ(リップル)。8個では波打ちが大きいはず。

理由

月面では「運ぶ数と⁠質量」が効く。合計の電流を同じにして、コイルの数だけを変えたときのリップルと⁠力を見る。磁力線だけ(プラズマ電流なし)では閉じ込めにならないことは前提。

1.179 T中心の磁場
28.2 %リップル
0.54 MNコイル間の力(最大)
35.2 m導体の長さ
8.1 T導体表面の最大磁場

計算で確認できたこと

  • 磁気軸(大半径 2.0 m)⁠の上で、コイルの直下 2.10 T・中間 1.18 T。リップル (B_coil−B_mid)⁠/(B_coil+B_mid) = 28%。
  • 大半径方向に 1/R の⁠形(内側 1.39 T・外側 0.86 T)⁠。
  • 磁力線は円環を一周して閉じる(打ち切り理由「閉じた」)。ただしプラズマ電流が無いので、このままでは閉じ込めにならない。
  • 導体 35 m・質量の目安 3.2 t、隣のコイルと⁠引き合う⁠力 0.54 MN。
  • 磁力線に沿ったミラー比(リップルによる⁠)⁠は中央値 1.9。

悪化した点・トレードオフ

  • リップル 28%(粒子がコイルの間の弱い磁場に捕まる)。
  • 導体表面の最大 8.1 T。

未検証の課題

  • リップルに捕まる粒子の割合。
  • プラズマ電流を足したときの磁力線(別の計算)。

次に必要な解析

  • コイル数 8〜24⁠ でリップル・質量・力の曲線を描く。
  • コイルを D 形にしたときの力の分布。

今回の比較条件での見立て

8 個では磁場が波打つ(リップル 28%)⁠。運ぶ数は少ないが、磁気軸の上でコイルの直下と⁠中間の磁場が 2 倍近く違う。今回の条件では 16 個の案に劣る。

基準=1 としたとき

1.33×中心の磁場
—ミラー比(軸上)
0.88×コイル間の力(最大)
2.80×導体の長さ
2.80×導体の質量の目安

トロイダル配置・16コイル

変えたもの⁠: コイル数 16(大半径 2.0 m・コイル半径 0.7 m・合計アンペア・ターンは同じ⁠)
トロイダル配置・16コイル 3D表示の代替画像

コイルと⁠磁力線(3D)

トロイダル配置・16コイル 基準(左)と比べる(中)・差(右)
基準(左)と⁠比べる(中)・差(右)
トロイダル配置・16コイル 軸上の |B|
軸上の |B|

仮説

円環の上に円形コイルを並べると、環の方向の磁場(トロイダル磁場)⁠ができる。コイルが少ないほど輸送質量は減るが、コイルの間で磁場が波打つ(リップル)。16個で波打ちがどこまで減るかを見る。

理由

月面では「運ぶ数と⁠質量」が効く。合計の電流を同じにして、コイルの数だけを変えたときのリップルと⁠力を見る。磁力線だけ(プラズマ電流なし)では閉じ込めにならないことは前提。

1.559 T中心の磁場
2.6 %リップル
0.45 MNコイル間の力(最大)
70.4 m導体の長さ
4.6 T導体表面の最大磁場

計算で確認できたこと

  • 合計アンペア・ターンを 8 個の案と⁠同じにして、コイルの数だけ 16 に。磁気軸の上で、コイルの直下 1.64 T・中間 1.56 T。リップル 2.6%(8 個は 28%)。
  • 中間の磁場は 8 個の 1.18⁠ T から 1.56⁠ T へ。コイルを増やすほど理想の円環電流 μ0⁠ N⁠ I⁠ / 2πR0⁠ = 1.60⁠ T⁠ に近づく。
  • 導体 70 m(8 個の 2 倍)、質量の目安 6.4 t。1 個あたりの電流は半分なので導体表面の磁場は 8.1⁠ → 4.6⁠ T⁠ に下がる。
  • 隣のコイルとの力は 0.45 MN(8 個は 0.54 MN)。磁力線に沿ったミラー比は中央値 1.08。

悪化した点・トレードオフ

  • 運ぶ数が 16 個、導体が 2 倍。

未検証の課題

  • プラズマ電流を含めた磁力線と⁠平衡(トカマクとしての成立)はここでは見ていない。

次に必要な解析

  • コイル数ごとのリップルと⁠質量の曲線から、月面で運べる 1 個の大きさ・重さと⁠突き合わせる。

今回の比較条件での見立て

16 個にすると⁠リップルは 28%⁠ → 2.6%。同じ合計電流でも磁気軸の中間の磁場は 1.18⁠ → 1.56⁠ T⁠ に上がる(理想の 1.60⁠ T⁠ に近づく)。代わりに導体は 2 倍(70 m・6.4 t)⁠。「数を減らすと⁠リップルと⁠磁場で損、増やすと⁠質量で損」のトレードオフがそのまま出る。

基準=1 としたとき

1.75×中心の磁場
—ミラー比(軸上)
0.74×コイル間の力(最大)
5.60×導体の長さ
5.60×導体の質量の目安
横長の帯: アポロ17号 タウラス・リトローのパノラマ
NASA / JSC2004E20304

SIDE BY SIDE

数字で並べる

同じ格子・同じ電流の条件で出した数字です。「最適」とは言いません。目的関数と⁠制約を決めていないからです。今回の条件で有望な候補に印をつけました。

数字で並べる
案コイル中心 B [T]ミラー比(軸上)一様さ⁠ / リップル [%]導体表面 B [T]力 [MN]導体 [m]質量目安 [t]漏れ 5 m [mT]
基準・単純ミラー(2コイル)基準 20.891.54 1.7 7.40.6112.61.1424
間隔を半径に(ヘルムホルツ配置) 21.801.06 0.0 7.62.8712.61.1420
間隔を広げたミラー 20.433.02 1.7 7.40.1812.61.1430
端のコイルを小さく(半径 1.0⁠ → 0.6 m)今回の条件で有望 20.573.76 1.6 7.90.137.50.689
コイルを傾けたミラー(±15°) 20.921.50 6.0 7.50.6412.61.1423
カスプ(電流を逆向きに⁠) 20.00— 196.7 7.30.6112.61.1412
5コイルのミラー(中央を一様に⁠・端を強く⁠)今回の条件で有望 51.182.90 0.0 10.71.1626.42.1134
単一コイルの双極子 11.682.83 2.2 10.90.009.41.5240
トロイダル配置・8コイル 81.18— 28.2リップル 8.10.5435.23.182
トロイダル配置・16コイル 161.56— 2.6リップル 4.60.4570.46.370

質量の目安⁠ = 見た目の太さ(tube)× 導体の長さ⁠ × 密度 8,000 kg/m³。本物のコイルの質量ではありません。一様さは中心の⁠球(半径 0.1 R)⁠のばらつき、トロイダル配置だけはリップル(コイル直下と⁠中間の差)。漏れ磁場は原点から 5 m の軸方向・半径方向の大きい方。

TRY IT

触って動かす

2コイルの間隔・半径・電流の比を動かすと、その場で断面の |B| と軸上の分布が描き直されます。計算はこのページの中(円形コイルの厳密解)。本計算と⁠同じ物理・同じ単位です。

断面 |B|(色は 0.05〜5⁠ T⁠ の対数・固定)。白い線は磁力線。
軸上の |B|。点線はコイルの面。
—T中心の |B|
—T軸上の最大
—ミラー比
—°ロスコーン角
—MNコイル間の⁠力
—m導体の長さ
  • 間隔を半径と⁠同じ(1.0 m)にすると⁠中心が最も一様になる(ヘルムホルツ)。
  • 電流の比を −1 にすると⁠カスプ。中心の磁場がゼロになる。
  • 間隔を広げると⁠ミラー比は上がるが、中心の磁場は弱くなる。
地球の出(アポロ8号)
地球の出。アポロ8号、1968年。地球から運べる質量が、月面の炉の形を決めます。NASA / AS08-14-2383

ON THE MOON

月面で効くのは、重力ではなく力と⁠熱と⁠質量

宇宙の真空や⁠低温を理由に、⁠真⁠空容器や⁠冷却設備が要らないとは考えません。炉の中は燃料を入れて動かし、超電導コイルの温度は能動冷却でしか作れず、捨てられる熱は放射だけだからです。プラズマを閉じ込める部分(コイルと⁠容器)と、放熱・支持・遮蔽を含む設備全体は分けて考えます。下の表は最初の10案のために、条件がコイルの置き方のどこに効くかを整理したものです。設備全体の大きさ(放熱の面積・遮蔽の厚みなど)は、冒頭の「月だと、火星だと」の章で一次の目安と⁠して計算しました。

重力と⁠支持構造

月面は 1/6 g。自重は軽くなるが、コイル同士の電磁力(MN 級)は変わらない。支持構造を決めるのは自重ではなく力。

効く変数コイルの間隔・向き → 力の大きさと⁠向き(引き合う/反発する⁠)

排熱と⁠放射器

対流がない。捨てられる熱は放射 σT⁴ だけ。放射器の面積が設備全体の形を決める。

効く変数開いた配置(ミラー・カスプ)⁠は放射器を置きやすい。密な配置は外に押し出される

輸送質量と⁠組立

打上げ費がすべてに掛かる。大きな一体物は運べない。少人数・ロボットで組む。

効く変数コイルの数・1つの大きさ・導体の長さ。同じ部品の繰り返しが有利

遮蔽と⁠設置場所

大気がない。中性子は遮蔽材だけで止める。レゴリスを盛れる。溶岩チューブや⁠縦穴に置ける。

効く変数軸が1本の配置は溝に埋めやすい。漏れ磁場が大きい配置は機器を遠ざける

保守性

人が頻繁に行けない。交換はロボットか無人。

効く変数同じ形のコイルを並べると⁠予備を共通化できる。巨大な1個は交換が最も重い

電源・燃料供給

太陽光は 14 日ごとに夜。燃料は月に無い。

効く変数超電導は一度流せば電源を切れる。制約は電流の大きさより「冷却を切らさないこと」

ASSUMPTIONS & LIMITS

仮定・限界・次の課題

オリオン宇宙船から見た月(アルテミスI)
NASA / ART001E000669

細線電流の近似

コイルの断面に電流が一様に流れる効果、超電導線の実際の配置、鉄などの磁性体は入っていません。CAD の太さは見た目と⁠質量の目安で、磁場には使っていません。

磁場は真空の磁場だけ

磁場はコイルだけが作る磁場です。プラズマの圧力・電流が作る磁場、安定性、閉じ込め、加熱は計算していません。核融合の出力 30 MW⁠ は大きさを比べるために置いた数字で、発電量の予測ではありません。材料の寿命と⁠コストも見ていません。

磁力線は向きの⁠絵

線が閉じていても、粒子が閉じ込められるとは限りません。ロスコーン角は単純ミラーの粒子の目安で、衝突・不安定は入っていません。

「最適」と⁠言わない

目的関数と⁠制約を定義していないので、「今回の比較条件で有望な候補」とだけ書きます。

力・熱・遮蔽は一次の目安

10の案の質量は、見た目の太さ⁠ × 長さ⁠ × 仮の密度です。4つの環境の炉では、コイル自身の磁場で外へ広がる力(フープ力)も入れて、ケースと⁠支柱の太さを出しました。放熱の面積は熱の収支と⁠放射の式、遮蔽の厚みは1/10価層の目安から出しています。中性子の輸送計算、温度の分布、構造の詳しい解析はしていません。

STEP に設計の履歴は残らない

STEP は形だけのファイルで、寸法の決め方は入っていません。形を変えるときは、計算の数字から作り直します。

次に必要な解析(順番)

  1. 力 → ケースのねじれ・支柱の腕の曲げ・月震を入れた構造の解析
  2. 排熱⁠ → 放射器の配管・ポンプ・温度の分布と、運転温度を変えたときの面積
  3. 質量⁠ → 超電導線・冷却管・構造材を含む実断面での質量
  4. 遮蔽⁠ → 中性子の輸送計算(モンテカルロ法)で、1/10価層の目安の厚みを確かめる
  5. 閉じ込め⁠ → 粒子軌道と MHD の最初の評価(別の道具)

DOCUMENTS

資料: 検証・条件・仮定

計算をどう確かめたか、宇宙の条件をどう整理したか、何を見て何を見ていないか。3つの資料にまとめました。