はじめに
段取りは、才能ではなく技術
先に結論を書きます。仕事の速さは、才能ではありません。順番です。
私は、特別に頭の回転が速い人間ではありません。入社からの十年は、むしろ残業の多いほうでした。多い月は四十五時間。夜のオフィスで、今日も終わらなかった、と思いながら帰る日が続きました。
変わったきっかけは、二人目の子どもが生まれて、夕方五時半に会社を出なければならなくなったことです。使える時間が減ったのに、仕事の量は減らない。追い詰められて、仕事のやり方そのものを見直すしかなくなりました。
それから三年かけて、少しずつ「段取り」を作り直しました。朝の三十分で一日を設計する。頼まれごとは最初の五分で形にする。会議は始まる前に終わらせる。ひとつずつ試して、残ったものだけをこの本に入れました。気がつけば残業はほぼゼロになり、不思議なことに、仕事の評価はむしろ上がっていました。
この本の元になっているのは、社内の勉強会で三回にわたって話した内容です。勉強会のあと、別の部署の人からも「資料がほしい」と言われることが続き、それならきちんと一冊にしようと思いました。
読むうえで、お願いがひとつあります。全部をいっぺんに真似しないでください。この本には七つの章がありますが、まずはどれかひとつで十分です。段取りは筋トレに似ていて、ひとつの型が身につくと、次の型は半分の力で身につきます。
道具の話は、ほとんど出てきません。特別なアプリも、高い手帳もいりません。ノートとペン、そして「先に決める」という小さな習慣だけです。
定時に帰る人は、さぼっている人ではありません。先に決めている人です。この本が、あなたの夕方を少しだけ早くできたら、うれしく思います。