谷を上ると湯が変わる
塩原温泉郷は栃木県北部、高原山と大佐飛山地の間を流れる箒川の渓谷に点在する11の温泉の総称で、古くから『塩原十一湯』と呼ばれた。元湯温泉の発見は806〜810年と伝わり、1000年以上の歴史を持つ。下流から大網・福渡・塩釜・塩の湯・畑下・門前・古町・中塩原・上塩原と並び、新湯と元湯だけは箒川を離れて南の高所にあり『奥塩原』とも呼ばれる。泉質は硫黄泉・酸性泉・硫酸塩泉・塩化物泉・炭酸水素塩泉・単純泉の6種、pHは2.6から9.2、湧出量は毎分1万リットル以上。旅館組合はこれを『源泉遺産』と呼び、泉質・色・性質から入りたい湯を選べることを売りにしている。[4][1]
町の人の湯を借りる
塩原には昔から共同湯が多く、家庭に風呂が普及する前は各集落が自分たちの浴場を持っていた。いまも残るのは4か所。新湯の寺の湯・中の湯・むじなの湯(酸性硫黄泉)と、古町のもみじの湯(塩化物・炭酸水素塩泉)で、いずれもボランティア運営、係員はおらず料金は箱に入れる。もみじの湯は唯一の露天で男女の区別がなく、秋には周りのもみじが色づく。福渡の『岩の湯』『不動の湯』も橋を渡った先にある混浴の露天だが、不動の湯は2015年に風紀の問題で一時閉鎖され、その後は条件付き・期間限定で開けられてきた。訪ねる前に現状を確かめたい。[5][4]
奥塩原の濁り湯と墨の湯
新湯と元湯は箒川から離れた山の上にあり、硫黄の匂いのする濁り湯で知られる。元湯の大出館は自家源泉を持ち、組合の紹介文で『日本で唯一の墨の湯』と呼ばれる黒い湯を源泉かけ流しで出す(日帰り700円、10〜16時、最終受付14時)。隣の元泉館は3種類の源泉を持ち、日によって白濁・緑・黒と湯の色が変わるという(800円、8〜18時)。新湯の渓雲閣や奥塩原高原ホテルは単純酸性硫黄温泉の白い湯。いずれも冬は積雪状況の確認を求めており、バスの便も少ないので、宿の送迎か車で向かうのが現実的だ。[2][4]
足湯・馬車・吊り橋
温泉街の中心には全長60mの足湯回廊を持つ温泉公園『湯っ歩の里』(大人300円)があり、6つの区間で湯温の違いを歩いて感じられる。塩原もの語り館の足湯は無料で9〜17時。4〜11月にはラッパを鳴らす観光トテ馬車が温泉街を走り、その名にちなんだ『とて焼』が町の新しい名物になった。渓谷側には塩原ダムに架かる320mのもみじ谷大吊橋、竜化の滝、紅の吊橋など滝と吊り橋が点在し、ハイキングコースで結ばれている。入口の道の駅湯の香しおばらは高速バスと路線バスの乗り継ぎ点で、冬はタイヤチェーンの着脱場にもなる。[2][4]