分析書は何のためにあるか
温泉を利用する施設は、温泉法により、都道府県の登録分析機関が作った「温泉分析書」を掲示する義務があります。2007年の改正で、10年ごとに分析し直すことも決まりました。源泉の温度や成分は年月で変わるからです。
分析書は源泉ごとに作られます。1つの施設に複数の源泉があれば、分析書も複数。浴槽でどの源泉を使っているかは、別の掲示や施設の説明で確かめます。
見る場所1: 泉温と湧出量
上のほうに「泉温 51.3℃(気温 12℃)」「湧出量 120 L/分(動力)」などとあります。泉温は源泉の温度で、浴槽の温度ではありません。湧出量は1分間に出る量で、「自然湧出」か「動力(ポンプ)」かも書かれます。湧出量が多いほど、かけ流しにしやすい。
見る場所2: pHと知覚的試験
「pH 2.1」なら酸性、「pH 9.2」ならアルカリ性。pHは7が中性で、酸性泉は3未満、アルカリ性単純温泉は8.5以上です。
「知覚的試験」には分析者が見て嗅いだ結果が書かれます。「無色透明、硫化水素臭、微苦味」のように。湯の色や匂いの公式な記録はここです。このアトラスの「湯の色」は、できるだけこの欄や公式の説明を根拠にしています。
見る場所3: 成分表と溶存物質
中央の表に、陽イオン(ナトリウム、カルシウム…)と陰イオン(塩化物、炭酸水素、硫酸…)が mg/kg、mval、mval% で並びます。mval% が20%以上のイオンが泉質名に入ります。「ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩泉」は、ナトリウムとカルシウム、塩化物と硫酸塩がそれぞれ20%以上という意味です。
表の下の「溶存物質(ガス性のものを除く)」が1,000mg/kg(=1g/kg)以上なら塩類泉、未満なら単純温泉。「成分総計」は溶存物質にガスを足した数です。
見る場所4: 特殊成分
遊離二酸化炭素、総鉄、総硫黄、よう化物イオン、ラドンなどの数値。これらが基準を超えると「含〇〇」「〇〇泉」が泉質名に付きます。ラドンは「×10⁻¹⁰ Ci/kg」「マッヘ」「Bq/kg」のどれかで書かれるので、単位を確かめてください(8.25マッヘ ≒ 111 Bq/kg が放射能泉の基準)。
見る場所5: 泉質名・適応症・分析年月日
最後に正式な泉質名、「浴用の適応症」「禁忌症」、分析した日付と機関名。適応症は環境省の指針に基づく公的な表示で、治療の保証ではありません。禁忌症(急性の病気、妊娠初期など)は必ず読みましょう。
分析年月日が10年以上前なら、更新されていない可能性があります。このアトラスでは分析日が分かる場合に載せています。
分析書と「掲示」は別の紙
分析書のそばには、もう一枚「温泉法に基づく掲示」があります。加水・加温・循環ろ過・入浴剤・消毒の有無と理由を書いたものです。分析書は源泉の成分、掲示は浴槽での扱い。両方読むと、源泉から浴槽までに何が起きているかが分かります。
用語
- mval%
- イオンの量を電気の量で比べた割合。泉質名に入るかどうかの目安(20%)。
- 登録分析機関
- 都道府県に登録された温泉分析の機関。分析書の末尾に名前がある。
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