温泉街: 湯元から広がる⁠町

温泉街は、湯が湧く場所(湯元)⁠を中心に宿・共同浴場・土産物屋・射的や⁠遊技場が集まった町です。江戸時代に街道と⁠結びついて栄え、明治以降は鉄道が温泉街を大きくしました。

歩いて楽しむのが温泉街の基本です。城崎では浴衣と⁠下駄で7つの外湯を回り、草津では湯畑を中心に放射状に通りが延び、銀山温泉では川の両岸に木造多層の旅館が並びます。温泉街の形は、その土地の地形と⁠湯の出方をそのまま映しています。

雪景色の川と柳 Asturio Cantabrio · CC BY-SA 4.0

城崎温泉

Kinosaki Onsen

兵庫県 · 日本⁠を知る100温泉 No.63

塩化物

浴衣に下駄、柳の川沿いを歩いて七つの外湯をはしごする。宿の風呂より町の風呂が主役の温泉地。

湯気を上げる湯畑と木樋 Aspere · CC0

草津温泉

Kusatsu Onsen

群馬県 · 日本⁠を知る100温泉 No.25

酸性硫黄硫酸塩塩化物

毎分3万2千リットル、pH2.1の酸の湯が町の真ん中から湧き出し、木の樋を流れて冷めていく。

川沿いに並ぶ木造3〜4階建ての旅館 lumoplank · CC0

銀山温泉

Ginzan Onsen

山形県 · 日本⁠を知る100温泉 No.20

硫黄塩化物

銀山川の両岸に、大正末から昭和初期の木造3〜4層の旅館が並ぶ。雪の夜、ガス灯がともる。

共同浴場: 外湯・総湯・ジモ泉

共同浴場は、宿の中の内湯に対して、町の人が共同で使う外の湯です。地域によって呼び名が違います。城崎や⁠野沢では「外湯」、加賀では「総湯」、別府では「市営温泉」「ジモ泉(地元の湯)⁠」。

野沢温泉の13の外湯は、「湯仲間」と⁠呼ばれる住民組織が掃除と⁠管理を続け、観光客は寸志(お礼の小銭)⁠で入ります。別府には100を超える共同浴場があり、100円程度で入れるものも多い。渋温泉では宿泊者が鍵を借りて9つの外湯を回ります。

作法は土地によって違います。かけ湯をする、タオルを湯に入れない、熱い湯に水を足す前に先客に声をかける。地元の人の湯であることを忘れずに。

木造の外湯・大湯の外観 小石川人晃 · CC BY-SA 4.0

野沢温泉

Nozawa Onsen

長野県 · 日本⁠を知る100温泉 No.47

硫黄

13の外湯はすべて村人の「湯仲間」が守り、料金箱に寸志を入れて入る。麻釜では90℃の湯で野菜をゆでる暮らしが続く。

別府温泉の写真 663highland · CC BY 2.5

別府温泉

Beppu Onsen

大分県

石畳の温泉街と木造の宿 Lsattayamas · CC BY-SA 4.0

渋温泉

Shibu Onsen

長野県 · 日本⁠を知る100温泉 No.48

硫酸塩塩化物硫黄単純

宿で鍵を借り、手ぬぐいを持って石畳を歩き、九つの外湯に順に印を押す。渋温泉では泊まることが湯めぐりの切符になる。

大屋根の菊の湯の外観 663highland · CC BY-SA 4.0

山中温泉

Yamanaka Onsen

石川県 · 日本⁠を知る100温泉 No.41

単純硫酸塩

芭蕉が「菊は⁠たおらぬ湯の匂」と⁠詠んだ渓谷の町で、総湯の菊の湯が今も温泉街のへそにある。

湯治: 滞在して治す

湯治は、温泉地に1〜3週間滞在し、1日に数回入浴して体を整える習慣です。農閑期の農民が疲れを癒し、病人が療養した。「一回り」を7日とし、三回り(21日)⁠が基本と⁠されました。

湯治宿は自炊が基本で、台所と⁠布団だけの部屋を安く借ります。花巻の大沢温泉、肘折温泉、玉川温泉、俵山温泉、鉄輪の貸間旅館には、今もこの形が残っています。環境省は2017年から「新・湯治」と⁠して、短期滞在でも温泉地の自然や⁠食と⁠あわせて健康づくりをする取り組みを進めています。

湯治は一人旅と⁠相性がいい。一人用の料金体系があり、長く泊まるほど⁠安くなるからです。

古い木造の湯治宿の外観 掬茶 · CC BY-SA 4.0

大沢温泉

Ōsawa Onsen

岩手県 · 日本⁠を知る100温泉 No.17

単純

豊沢川に張り出した混浴露天「大沢の湯」と、素泊まり4,000円台⁠の自炊部。湯治の暮らしがそのまま残っている。

雪の中の肘折温泉の旅館街 Totti · CC BY-SA 4.0

肘折温泉

Hijiori Onsen

山形県 · 日本⁠を知る100温泉 No.21

塩化物炭酸水素塩

朝5時、雪国の湯治場の軒先に市が立つ。807年から続く「暮らしの温泉」。

雪の残る山中で湯気の上がる荒れ地と宿の建物 あおもりくま · CC BY-SA 3.0

玉川温泉

Tamagawa Hot Spring

秋田県 · 日本⁠を知る100温泉 No.13

酸性塩化物

pH1.2、1か所から毎分約9,000L。日本でいちばん酸の強い湯が、噴気の谷から流れ出す。

狭い通りに並ぶ旅館 Bsx · Public domain

俵山温泉

Tawarayama Onsen

山口県 · 日本⁠を知る100温泉 No.80

単純

宿に風呂がない。客は浴衣で通りに出て、町の湯か白猿の湯へ歩く。西日本で最も大きな湯治場の原型が、山口の山あいにそのまま残っている。

鉄輪むし湯の外観 STA3816 · CC BY-SA 3.0

鉄輪温泉

Kannawa Onsen

大分県 · 日本⁠を知る100温泉 No.86

塩化物

町じゅうから湯けむりが上がり、人は蒸気で野菜を蒸し、石菖の床で体を蒸し、100円の共同浴場に入る。

番付・三名泉・保養温泉地

江戸時代には相撲の番付をまねた「温泉番付」が出版され、草津が東の大関、有馬が西の大関でした。室町の僧・万里集九と⁠江戸の林羅山が挙げた草津・有馬・下呂は「日本三名泉」、日本書紀や⁠風土記に記される道後・有馬・白浜は「日本三古湯」と呼ばれます。

現代の公的な選定は、環境省の「国民保養温泉地」です。泉質と⁠湧出量、環境、医師との連携などの条件で1954年から指定され、2022年時点⁠で79か所。このアトラスでは指定年とともに載せています。

湯気を上げる湯畑と木樋 Aspere · CC0

草津温泉

Kusatsu Onsen

群馬県 · 日本⁠を知る100温泉 No.25

酸性硫黄硫酸塩塩化物

毎分3万2千リットル、pH2.1の酸の湯が町の真ん中から湧き出し、木の樋を流れて冷めていく。

茶色く濁った露天風呂 663highland · CC BY-SA 4.0

有馬温泉

Arima Onsen

兵庫県 · 日本⁠を知る100温泉 No.62

含鉄塩化物二酸化炭素放射能(ラドン)

海水より濃い塩と⁠鉄の『金泉』と、炭酸と⁠ラドンの『銀泉』。まったく違う2つの湯が、徒歩5分の距離で湧く。

飛騨川と下呂温泉の町並み Asturio Cantabrio · CC BY-SA 4.0

下呂温泉

Gero Onsen

岐阜県 · 日本⁠を知る100温泉 No.53

単純

pH9を超えるアルカリの湯が55℃で町じゅうの宿に配られ、駅から歩ける9つの足湯で、入らずとも「つるつる」が分かる。

夜の道後温泉本館 Takuya Matsuyama · CC BY 3.0

道後温泉

Dōgo Onsen

愛媛県 · 日本⁠を知る100温泉 No.82

単純

18本の源泉を分湯場で混ぜ、加温も加水もせずに42℃前後の湯を重要文化財の木造三層楼へ送る。

海に面した岩場の露天風呂 663highland · CC BY 2.5

南紀白浜温泉

Nanki-Shirahama Onsen

和歌山県 · 日本⁠を知る100温泉 No.65

塩化物硫黄

万葉の時代から続く『崎の湯』は、太平洋の波打ち際に浴槽がある。石けんは使えない。湯がそのまま海へ流れるからだ。

温泉と⁠食

温泉の熱は料理にも使われます。別府・鉄輪の地獄蒸し、野沢の麻釜でゆでる野菜、湯村の荒湯で作る温泉卵、嬉野の温泉湯豆腐、鹿児島・鰻温泉の「スメ」(蒸気の竈)⁠。温泉街の名物は、湯の性質そのものから生まれたものが多い。

このアトラスの「食と⁠文化」の特集は、こうした温泉と⁠食・芸能の結びつきを、実際に行ける場所と⁠移動時間つきで案内します。

鉄輪むし湯の外観 STA3816 · CC BY-SA 3.0

鉄輪温泉

Kannawa Onsen

大分県 · 日本⁠を知る100温泉 No.86

塩化物

町じゅうから湯けむりが上がり、人は蒸気で野菜を蒸し、石菖の床で体を蒸し、100円の共同浴場に入る。

木造の外湯・大湯の外観 小石川人晃 · CC BY-SA 4.0

野沢温泉

Nozawa Onsen

長野県 · 日本⁠を知る100温泉 No.47

硫黄

13の外湯はすべて村人の「湯仲間」が守り、料金箱に寸志を入れて入る。麻釜では90℃の湯で野菜をゆでる暮らしが続く。

川沿いに湯気の立つ源泉と足湯 Asturio Cantabrio · CC BY-SA 4.0

湯村温泉

Yumura Onsen

兵庫県 · 日本⁠を知る100温泉 No.64

塩化物硫酸塩炭酸水素塩

98℃の湯が毎分470リットル、川べりの岩の間から噴き出す。人はそこで卵を茹で、冷めた湯に足を浸ける。

オレンジ色の屋根の洋風木造建築 STA3816 · CC BY-SA 4.0

嬉野温泉

Ureshino Onsen

佐賀県 · 日本⁠を知る100温泉 No.93

炭酸水素塩塩化物

とろりと⁠した重曹泉で知られる「日本三大美肌の湯」。その温泉水で豆腐を煮ると、煮汁が白く濁ってとろける。

木造の建物が並ぶ坂道の集落 Sakaori (talk) · CC BY 3.0

鰻温泉

Unagi Onsen

鹿児島県 · 日本⁠を知る100温泉 No.99

硫黄

火口湖のほとりの小さな集落で、家々の庭先にある蒸気のかまど「スメ」が今も毎日の料理に使われている。

用語

湯仲間
野沢温泉で外湯を維持する住民の組織。
貸間
別府・鉄輪に残る、自炊で長く泊まる素泊まりの部屋。
国民保養温泉地
温泉法に⁠基づき環境大臣⁠が指定する温泉地。1954年〜。

関連する温泉

木造の外湯・大湯の外観 小石川人晃 · CC BY-SA 4.0

野沢温泉

Nozawa Onsen

長野県 · 日本⁠を知る100温泉 No.47

硫黄

13の外湯はすべて村人の「湯仲間」が守り、料金箱に寸志を入れて入る。麻釜では90℃の湯で野菜をゆでる暮らしが続く。

雪景色の川と柳 Asturio Cantabrio · CC BY-SA 4.0

城崎温泉

Kinosaki Onsen

兵庫県 · 日本⁠を知る100温泉 No.63

塩化物

浴衣に下駄、柳の川沿いを歩いて七つの外湯をはしごする。宿の風呂より町の風呂が主役の温泉地。

古い木造の湯治宿の外観 掬茶 · CC BY-SA 4.0

大沢温泉

Ōsawa Onsen

岩手県 · 日本⁠を知る100温泉 No.17

単純

豊沢川に張り出した混浴露天「大沢の湯」と、素泊まり4,000円台⁠の自炊部。湯治の暮らしがそのまま残っている。

別府温泉の写真 663highland · CC BY 2.5

別府温泉

Beppu Onsen

大分県