法律の決まり: 25℃か、成分か

日本の「温泉」は、1948年にできた温泉法と⁠いう法律で決まっています。地中から湧き出す水や⁠水蒸気で、次のどちらかを満たすものが温泉です。

  • 湧き出すときの温度が25℃以上
  • 決められた19種類の成分(溶けている物質の総量、硫黄、鉄、ラドンなど)⁠のどれかが、決められた量以上入っている

つまり、温度が低くても成分が足りれば温泉です。これが「冷鉱泉」で、山梨の増富温泉や⁠各地の鉱泉はこの仲間です。逆に、成分がほとんどなくても25℃以上なら温泉と⁠呼べます。

「25℃」は、日本の平均的な地下水の温度より明らかに高い、と⁠いう目安から決まった数字です。

「療養泉」はもう一段きびしい

温泉の中でも、成分が一定量を超えるものを「療養泉」と⁠呼びます。泉質名(単純温泉、硫黄泉、放射能泉など)⁠が付くのは療養泉だけです。温泉法上は温泉でも、療養泉の基準に届かないと⁠泉質名は付きません。

療養泉の条件は、温度25℃以上か、7つの成分(溶存物質総量、遊離二酸化炭素、総鉄、水素イオン、よう化物イオン、総硫黄、ラドン)⁠のいずれかが基準以上であること。この区別は、温泉のページで「泉質未確認」や「療養泉の規定に満たない温泉」と⁠表示される理由でもあります。

天然温泉と、そうでないお風呂

街の銭湯や⁠スーパー銭湯の中には、温泉法の温泉を使っている所と、水道水を沸かした所、入浴剤で温泉らしくした「人工温泉」があります。見分け方は脱衣所の掲示です。温泉を使う施設には、温泉分析書と、加水・加温・循環・消毒についての掲示が義務づけられています。

このアトラスでは、天然温泉かどうかが資料で確かめられない施設に「天然温泉かは未確認」の印を付け、温泉と⁠混同させないようにしています。

温泉は火山だけから湧くのではない

草津や⁠登別のように火山の熱で温められた温泉が有名ですが、火山のない場所にも温泉はあります。地下深くでは100mごとに約3℃温度が上がるので、1,000m以上掘れば多くの場所で25℃を超える水が出ます。東京の黒湯や⁠千葉の含よう素泉は、太古の海水や⁠植物由来の成分を含む「非火山性」の温泉です。

火山性か非火山性かは、お湯の性格にはっきり表れます。火山性は酸性や⁠硫黄の湯が多く、非火山性は塩分や⁠炭酸水素塩、よう素を含む湯が多いのです。

蒲田温泉

Kamata Onsen

東京都 · 日本⁠を知る100温泉 No.35

炭酸水素塩塩化物

手を入れると⁠見えなくなるほど黒い湯が、東京の住宅街の銭湯に、600円で湧いている。

養老渓谷温泉の川の家 白蛇の騎士 · CC BY-SA 3.0

養老渓谷温泉

Yōrō-keikoku Onsen

千葉県 · 日本⁠を知る100温泉 No.36

塩化物炭酸水素塩

房総の渓谷に湧く焦げ茶色の湯。火山はない。源泉は20℃前後の冷たい鉱泉で、ガスで温めて浴槽に入れる。

十勝川沿いに並ぶホテル 663highland · CC BY 2.5

十勝川温泉

Tokachigawa Onsen

北海道 · 日本⁠を知る100温泉 No.6

塩化物炭酸水素塩

火山ではなく、太古の植物が温めた湯。茶色くとろりと⁠したモール泉の代表。

用語

温泉法
1948年制定。温泉の定義、掘削の許可、利用の掲示などを定める法律。環境省が所管。
療養泉
温泉のうち、温度または7成分の基準を満たし、泉質名が付くもの。
冷鉱泉
25℃未満だが成分で温泉と⁠認められるもの。加温して入ることが多い。

関連する温泉

湯気を上げる湯畑と木樋 Aspere · CC0

草津温泉

Kusatsu Onsen

群馬県 · 日本⁠を知る100温泉 No.25

酸性硫黄硫酸塩塩化物

毎分3万2千リットル、pH2.1の酸の湯が町の真ん中から湧き出し、木の樋を流れて冷めていく。

増富温泉

Masutomi Onsen

山梨県 · 日本⁠を知る100温泉 No.44

放射能(ラドン)

30℃前後のぬるい湯に黙って30分。日本で最も濃いラドン泉のひとつを、温めずそのまま浴びる湯治場。

蒲田温泉

Kamata Onsen

東京都 · 日本⁠を知る100温泉 No.35

炭酸水素塩塩化物

手を入れると⁠見えなくなるほど黒い湯が、東京の住宅街の銭湯に、600円で湧いている。