定義: 法律の言葉ではない
「源泉かけ流し」は温泉法の用語ではありません。一般には、源泉から引いた湯を浴槽に注ぎ続け、あふれた湯を再利用(循環)せずに捨てる方式を指します。湯船の中の湯が常に入れ替わるので、湯の鮮度が保たれ、消毒が不要な場合が多い。
2005年の温泉法改正で、施設には「加水・加温・循環ろ過・入浴剤・消毒」の有無を掲示する義務ができました。かけ流しかどうかは、この掲示の「循環ろ過なし」でほぼ判断できます。日本温泉協会は「天然温泉表示看板」で、源泉の状態・加水・加温・湯の流れ・新湯の注入・消毒の5項目を5段階で示す制度も運用しています。
なぜ難しいのか: 湯量と温度
かけ流しには、浴槽の大きさに見合う湯量が要ります。目安として、浴槽の湯が数時間で入れ替わる量。湧出量が少ない温泉地で大浴場を作れば、循環せざるを得ません。
温度も問題です。源泉が90℃なら、そのまま入れられないので冷ます必要があります。加水すれば簡単ですが成分が薄まる。だから草津は「湯もみ」と「時間湯」で、湯畑では木の樋に流して空気で冷まします。高湯温泉は源泉から浴槽まで距離をとって自然に冷まし、全施設がかけ流しです。逆に源泉が38℃なら、加温なしでは冬に入れないことがあります。
つまり「加水なし・加温なし・循環なし」を全部満たすのは、湯量が豊富で温度がちょうどよい、恵まれた温泉だけです。
Aspere · CC0
Kusatsu Onsen
群馬県 · 日本を知る100温泉 No.25
酸性硫黄硫酸塩塩化物
毎分3万2千リットル、pH2.1の酸の湯が町の真ん中から湧き出し、木の樋を流れて冷めていく。
Purplepumpkins · CC BY-SA 3.0
Takayu Onsen
福島県 · 日本を知る100温泉 No.22
硫黄
9本の源泉、毎分2,589リットル。加水も加温もせず、山の高低差だけで湯を冷まして届ける白い湯。
妙見温泉
写真未掲載
Myōken Onsen
鹿児島県 · 日本を知る100温泉 No.98
炭酸水素塩
天降川の谷に宿が並び、どの宿も自分の源泉を持ち、循環風呂は一つもない湯治場。
循環は悪いことか
循環ろ過は、限られた湯を大勢で使うための技術です。湯をろ過器に通して汚れを取り、温め直して浴槽に戻す。この方式ではレジオネラ菌の繁殖を防ぐため、塩素系の消毒が法令で求められます。消毒の匂いと、成分の変化(硫黄泉の白濁が消える、など)が循環の弱点です。
ただし、循環していても一部に新しい湯を足す「半循環」もあり、浴槽ごとに違うこともあります。同じ施設で「露天はかけ流し、内湯は循環」はよくある形。このアトラスが浴槽ごとに記録している理由です。
「源泉100%」「天然温泉100%」との違い
「源泉100%」は加水していないという意味で、循環しているかどうかは言っていません。「天然温泉」は温泉法の温泉を使っているという意味で、かけ流しかどうかとは別です。「かけ流し」と書いてあっても加温していることはあります。
確かめるなら、脱衣所の掲示を読むのが確実です。加水・加温・循環・消毒の4項目がどうなっているか。このアトラスの記事では、公式サイトや掲示で読めた項目だけを「あり/なし」で書き、読めなかったものは「未確認」のままにしています。
かけ流し宣言をした温泉地
温泉地ぐるみで「全施設が源泉かけ流し」を宣言した場所があります。高湯温泉(福島)は2010年に「源泉かけ流し宣言」、十津川温泉郷(奈良)は2004年に「源泉かけ流し宣言」を全国で初めて行ったとされ、妙見温泉(鹿児島)も全施設かけ流しをうたっています。こうした温泉地は、湯量が豊富なことの証でもあります。
検索では「源泉かけ流しの浴槽がある」で絞り込めます。これは詳しい記事で浴槽ごとに確認できた温泉地だけが出ます。
Purplepumpkins · CC BY-SA 3.0
Takayu Onsen
福島県 · 日本を知る100温泉 No.22
硫黄
9本の源泉、毎分2,589リットル。加水も加温もせず、山の高低差だけで湯を冷まして届ける白い湯。
Soica2001 (talk) · Public domain
Totsukawa Onsen
奈良県 · 日本を知る100温泉 No.69
炭酸水素塩塩化物
村じゅうの温泉が、循環も加水も塩素も使わない。2004年にそう宣言した山奥の温泉郷の中心地。
妙見温泉
写真未掲載
Myōken Onsen
鹿児島県 · 日本を知る100温泉 No.98
炭酸水素塩
天降川の谷に宿が並び、どの宿も自分の源泉を持ち、循環風呂は一つもない湯治場。
用語
- 循環ろ過
- 浴槽の湯をろ過器に通し、温め直して戻す方式。消毒が必要になる。
- 湯もみ
- 草津で、板で湯をかき回して冷ます方法。加水せずに入れる温度にする。
- 天然温泉表示看板
- 日本温泉協会の制度。源泉・加水・加温・流れ・消毒を5段階で示す。
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Purplepumpkins · CC BY-SA 3.0
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毎分3万2千リットル、pH2.1の酸の湯が町の真ん中から湧き出し、木の樋を流れて冷めていく。