海から見たアマルフィの町。右の斜面にレモンの段々畑

世界のレモン

土地が変われば、レモンも変わる。

地中海の段々畑から、南米の大産地まで。品種と⁠季節と食文化の地図をひらきます。

写真: Falk2 / CC BY-SA 4.0

レモンは、アジアの柑橘どうしの交雑から生まれ、地中海で広く育てられ、航海とともに世界へ広がった果実です。いまでは土地ごとに品種が選ばれ、収穫の季節も、料理での役割もちがいます。

このページでは、産地、品種、地理的表示(産地名を守る制度)⁠を分けて紹介します。産地ごとの優劣をつけるのではなく、それぞれの魅力を知るための地図です。

01
海から見たアマルフィの町。背後の斜面に段々畑が刻まれています。

イタリア · 地中海

アマルフィ海岸

カンパーニア州

地理的表示Limone Costa d'Amalfi · PGI
主な⁠品種
Sfusato Amalfitano
特徴
先のとがった細長い楕円形で、皮は中くらいの厚み。EUの登録文書は、精油に富んだ皮と強い香り、たっぷりの果汁、種の少なさを特徴に挙げています。海に落ちこむ斜面の段々畑で、栗材などの棚に枝をはわせ、覆いをかけて寒さや⁠雹から守りながら、ゆっくり熟させます。
食べられ方
皮の香りを生かしたレモンのリキュールが名高く、「アマルフィ海岸のレモンリキュール」はEUの蒸留酒の地理的表示にも登録されています。産地の保護協会は、淡い黄色の厚い皮の下にやわらかく甘みのある果肉があると紹介しています。
出典

eAmbrosia – EU geographical indications register (public API listing, searched 2026-10-05)European Commission

‘Limone Costa d'Amalfi’ – amendment application and single document, OJ C 137, 29.4.2017, p. 4Official Journal of the European Union (Publications Office of the EU)

eAmbrosia entry ‘Liquore di limone della Costa d'Amalfi’ (PGI-IT-01907, spirit drink GI)European Commission

Consorzio di Tutela Limone Costa d'Amalfi IGP – official siteConsorzio di Tutela Limone Costa d'Amalfi IGP

02
1911年、ソレントのレモンの⁠収穫。

イタリア · 地中海

ソレント半島とカプリ島

カンパーニア州

地理的表示Limone di Sorrento · PGI
季節
年に何度も花が咲き、長い期間収穫されます。
特徴
産地はヴィーコ・エクエンセからマッサ・ルブレンセ、カプリ島まで。実は左右対称の楕円形で、中〜やや⁠大玉。皮は中くらいの厚みで精油に富み、香りが強いと⁠EUの登録文書は記しています。火山性の水はけのよい土と海風のもと、支柱と⁠覆いの棚、あるいは高木の陰で育てる風景が、半島の景観そのものになっています。
食べられ方
EUの登録文書は、皮の香りのよさからこのレモンが伝統のリキュール「リモンチェッロ」の主原料であると述べています。果汁は酸と⁠糖のつり合いがよく、砂糖を足さずに口にできるとも書かれています。「ソレントのレモンリキュール」も蒸留酒の地理的表示です。
出典

eAmbrosia – EU geographical indications register (public API listing, searched 2026-10-05)European Commission

‘Limone di Sorrento’ – amendment application and single document, OJ C 105, 24.4.2010, p. 12Official Journal of the European Union (Publications Office of the EU)

eAmbrosia entry ‘Liquore di limone di Sorrento’ (PGI-IT-01852, spirit drink GI)European Commission

03
シチリア・シラクーザのレモンの⁠木。

イタリア · 地中海

シラクーザ

シチリア州南東部

地理的表示Limone di Siracusa · PGI
主な⁠品種
Femminello
季節
一年を通して収穫。10月1日からの「プリモフィオーレ」、4月15日からの「ビアンケット(マイオリーノ)⁠」、7月1日からの「ヴェルデッロ」と、時期ごとに呼び名が変わります。
特徴
フェンミネッロという品種と⁠その系統だけに認められた表示です。EUの登録文書は、果汁の多さ、中〜大玉の大きさ、一年じゅう収穫できることを特徴に挙げ、イオニア海から10km以内の沿岸に産地を限っています。イブレイ台地の地下水が、みずみずしく皮のきめ細かい実を支えると説明しています。
食べられ方
保護協会は、レモンを地中海の料理に欠かせない素材と位置づけ、料理人のレシピや⁠菓子「デリツィア・アル・リモーネ」を紹介しています。登録文書は、収穫後のワックスと合成防かび剤の使用を禁じ、加工専用の実にも表示を認めています。
出典

eAmbrosia – EU geographical indications register (public API listing, searched 2026-10-05)European Commission

‘Limone di Siracusa’ – amendment application and single document, OJ C 165, 20.5.2015Official Journal of the European Union (Publications Office of the EU)

‘Limone di Siracusa’ – summary, OJ C 135, 26.5.2010Official Journal of the European Union (Publications Office of the EU)

Consorzio di Tutela del Limone di Siracusa IGP – official siteConsorzio di Tutela del Limone di Siracusa IGP

04

イタリア · 地中海

エトナ山麓の海岸

シチリア⁠州カターニア⁠県

地理的表示Limone dell'Etna · PGI
主な⁠品種
Femminello · Monachello
季節
フェンミネッロは9月15日からの冬の実「プリモフィオーレ」、4月1日からの春の実、5月15日からの夏の「ヴェルデッロ」。モナケッロの冬の実は10月15日から。
特徴
エトナ山とイオニア海にはさまれた火山性の土で育つレモン。EUの登録文書は、皮に油胞が多く、香りのよい精油を含むと⁠説明し、古い研究を引いて、レモンらしい香りのもとになる成分シトラールの多さに触れています。海が気候をやわらげる土地で、産地はアチレアーレなど16の市町村です。
食べられ方
登録文書は、生食用の規格に合わない実も、果汁と⁠精油の基準を満たせば加工用と⁠してこの名前を使えると定めています。
出典

eAmbrosia – EU geographical indications register (public API listing, searched 2026-10-05)European Commission

‘Limone dell'Etna’ – single document, OJ C 204, 18.6.2020, p. 24Official Journal of the European Union (Publications Office of the EU)

05

イタリア · 地中海

メッシーナのイオニア海岸

シチリア州

地理的表示Limone Interdonato Messina · PGI
主な⁠品種
Interdonato
季節
9月1日〜4月15日。地中海のほかの産地で黄色いレモンが出る前に出荷できる早生です。
特徴
インテルドナートは、シトロンとレモンの自然交雑から生まれた品種。EUの登録文書は、早く熟すこと、クエン酸が少なくやさしい味の果肉、薄くなめらかな皮を特徴としています。1875年にインテルドナート大佐が選び出したと伝わり、メッシーナからタオルミーナにかけての急な斜面で育ちます。
出典

eAmbrosia – EU geographical indications register (public API listing, searched 2026-10-05)European Commission

‘Limone Interdonato Messina’ – single document, OJ C 74, 28.3.2009Official Journal of the European Union (Publications Office of the EU)

Consorzio di Tutela Limone Interdonato – official siteConsorzio di Tutela Limone Interdonato Messina IGP

06

イタリア · 地中海

ロッカ・インペリアーレ

カラブリア州

地理的表示Limone di Rocca Imperiale · PGI
主な⁠品種
Femminello
季節
8月前半にレモン祭りが開かれます。
特徴
ひとつの町だけを産地と⁠する表示です。西・北・南の丘が北風をさえぎり、南東の海が気候をやわらげます。EUの登録文書は、精油に富んだ皮と強く長く残る香り、種がほとんどない果肉を特徴に挙げ、栽培地は「ロッカ・インペリアーレのレモンの庭」と呼ばれていると記しています。
食べられ方
登録文書は、精油に富む皮と果汁が、料理の香りと⁠味を引き立てるために伝統料理で使われてきたと述べています。1980年代から続く祭りでは、このレモンを使った料理が振る舞われ、8月前半の「レモン祭り」がいちばん知られた催しです。
出典

eAmbrosia – EU geographical indications register (public API listing, searched 2026-10-05)European Commission

‘Limone di Rocca Imperiale’ – single document, OJ C 157, 27.5.2011Official Journal of the European Union (Publications Office of the EU)

07

イタリア · 地中海

ガルガーノ半島

プーリア⁠州フォッジャ⁠県

地理的表示Limone Femminello del Gargano · PGI
主な⁠品種
Femminello comune (Lustrino) · Oblong (Fusillo)
季節
一年を通して手で収穫(登録文書)⁠。
特徴
アドリア海に突き出た半島の北岸、ヴィーコ・デル・ガルガーノ、イスキテッラ、ローディ・ガルガニコが産地。皮がやわらかく丸い「ルストリーノ」と、細長い「フジッロ」の2つの型があり、EUの要約はどちらも精油に富み香りがとても強いと記しています。斜面は石垣の段々畑で、トキワガシ(ホルムオーク)などの防風垣が冷たい風を防ぎます。
食べられ方
スローフードのプレシディオ(保護活動)⁠によると、生産者はガルガーノの柑橘でマーマレード、皮の砂糖漬け、リモンチェッロを作っています。かつては色つきの薄紙に包まれ、船で各地へ運ばれました。半島の町ローディはレモンで知られます。
出典

eAmbrosia – EU geographical indications register (public API listing, searched 2026-10-05)European Commission

‘Limone Femminello del Gargano’ – summary, OJ C 314, 10.12.2005Official Journal of the European Union (Publications Office of the EU)

Gargano Citrus Fruits – Slow Food PresidiumSlow Food Foundation for Biodiversity

08
マントン、石造りの家の庭で実るレモン。

フランス · 地中海

マントン

フランス、アルプ=マリティーム⁠県

地理的表示Citron de Menton · PGI
主な⁠品種
Adamo · Cerza · Eureka · Santa Teresa · Menton
季節
熟し具合を見ながら一年を通して手で収穫。真冬の冷えこむ時期に、色がいちばん鮮やかになります。
特徴
海と⁠山にはさまれた「レスタンク」と呼ばれる段々畑で育ちます。EUの登録文書は、樹の上で色づく鮮やかな黄色、きめの細かい皮、しぼると⁠立つレモングラスのような強い香り、酸っぱいけれど苦くない果汁を特徴に挙げています。収穫後の薬剤処理もワックスがけもしません。葉つきで摘むのが土地の習わしです。
食べられ方
登録文書には加工向けの荷姿の定めがあり、コート・ダジュールの観光公式サイトは、果実と加工品を扱う生産者を紹介しています。冬には、柑橘で飾った山車と⁠展示で知られるレモン祭り(フェット・デュ・シトロン)⁠が開かれます。
出典

eAmbrosia – EU geographical indications register (public API listing, searched 2026-10-05)European Commission

‘Citron de Menton’ – single document, OJ C 147, 5.5.2015, p. 11Official Journal of the European Union (Publications Office of the EU)

Histoire de Citrons (Menton) – Destination Côte d'Azur FranceCôte d'Azur France Tourisme (official site)

Fête du Citron® à Menton – official siteFête du Citron® (Menton)

09

スペイン · 地中海

ムルシア

スペイン。バレンシア州、アンダルシア州の一部も

産地
主な⁠品種
Fino (Primofiori) · Verna
季節
フィノは秋から冬、ベルナは春から⁠夏(収穫量の多くは4〜7月)⁠。2品種のリレーで長く出荷します。
特徴
EUで最大のレモン産地。米国農務省の報告によると、スペインはEUのレモン生産の約65%を占め、産地はムルシア州、バレンシア州、アンダルシア州のマラガ県・アルメリア県に集まります。フィノが約7割、ベルナが約3割。業界団体は、ベルナは皮がやや⁠厚く色が濃い黄色で、種が3〜4粒と少ないと説明しています。
食べられ方
業界団体は、塩を控えて料理の味を引き立てる使い方、皮のすりおろし、ラムとミントのレモネード、はちみつ入りのレモンのグラニサード(かき氷状の飲みもの⁠)などを紹介しています。フィノは加工品づくりにも広く使われます。
出典

Citrus Annual – European Union (E42025-0032, 7 Jan 2026)USDA Foreign Agricultural Service (GAIN report)

El limón: datos generales y variedadesAILIMPO (Asociación Interprofesional de Limón y Pomelo, Murcia)

10
焼きいわしとレモン。ギリシャ・サントリーニ島。

ギリシャ · 地中海

ペロポネソス半島とクレタ島

国
主な⁠品種
Maglini · Interdonato · Eureka
季節
おもに冬の果実。夏に実る晩生の種類もあると紹介されています。
特徴
米国農務省の報告は、主産地をペロポネソス半島のアカイア、コリントス、ラコニアの各県とクレタ島とし、主力品種はマグリーニ、早生と⁠してインテルドナートとユーレカを挙げています。ポロス島の対岸には「レモンの⁠森(レモノダソス)⁠」⁠と呼ばれる一帯があります。EUの地理的表示に登録されたギリシャのレモンは見当たりませんでした。
食べられ方
卵と⁠レモンのソース⁠兼スープ「アヴゴレモノ」と、オリーブ油・レモン汁・塩・オレガノを合わせた「ラドレモノ」が代表格。くし切りを焼いた肉や魚、豆のピュレ、サラダにしぼるのが日常の使い方で、タイムやオレガノなど土地のハーブとも相性がよいとされます。
出典

Citrus Annual – European Union (E42025-0032, 7 Jan 2026)USDA Foreign Agricultural Service (GAIN report)

When Life Gives You Lemons, Make a Greek RecipeDiane Kochilas (Greek food writer; official site)

eAmbrosia – EU geographical indications register (public API listing, searched 2026-10-05)European Commission

11
トルコ南部アダナで実るインテルドナート種のレモン。

トルコ · 地中海

エルデムリ

トルコ、メルスィン県

地理的表示Erdemli Lamas Limonu · GI (Türkiye)
主な⁠品種
Lamas · Kütdiken · Meyer · Interdonato
季節
ラマスは11月初めから2月まで。国全体では9月に早生のメイヤーから始まり、ラマス、キュトディケンと続きます。
特徴
米国農務省の報告では、トルコのレモンの半分がメルスィン県で作られます。エルデムリは地中海に面し、北をトロス山脈に守られた温暖な土地。トルコ特許商標庁の登録簿は、ラマスを黄色く果汁が多く香り高い実、なめらかで中くらいの厚みの皮、先がはっきりとがった細長い形と記し、貯蔵に向くとしています。
食べられ方
登録簿によると、収穫した実は休ませてから天然の貯蔵庫へ運び、生のレモンが市場に少ない時期にも出荷します。米国農務省の報告は、カッパドキアのユルギュップで洞窟に貯蔵する例にも触れています。
出典

Erdemli Lamas Limonu – Coğrafi İşaret Tescil Belgesi No. 466 (registered 21.10.2019)Türk Patent ve Marka Kurumu (Turkish Patent and Trademark Office)

Citrus Annual – Türkiye (TU2025-0067, 20 Jan 2026)USDA Foreign Agricultural Service (GAIN report)

12
びん詰めの塩レモン。

モロッコ · アフリカ

モロッコ

塩レモンの⁠国

国
特徴
モロッコの柑橘はみかん類とオレンジが中心で、米国農務省はレモン・ライムの生産を2025/26年度に4万8千トンと見込んでいます。量は多くありませんが、レモンを塩で漬ける食文化で世界に知られます。
食べられ方
丸ごと、または切ったレモンを塩と⁠レモン汁、水で漬け、常温で数週間から数か⁠月おきます。いちばん大事にされるのは皮で、塩を洗い流して刻み、タジンなどの煮こみ、オリーブ、鶏肉、魚介と合わせます。果肉も煮こみやソースに使えます。
出典

Citrus Annual – Morocco (MO2025-0021, 19 Dec 2025)USDA Foreign Agricultural Service (GAIN report)

Preserved lemonWikipedia

13
カリフォルニア⁠州ソミス、空から見た若い果樹園(アボカドとメイヤーレモン)⁠。

アメリカ合衆国 · 北米

カリフォルニア

アメリカ。南部沿岸、サンホアキン・バレー、砂漠地帯

産地
主な⁠品種
Eureka · Lisbon
季節
州の出荷年度は8月1日〜翌7月31日で、ほぼ一年を通して出回ります。ユーレカは晩冬〜初夏、リスボンは冬〜早春が収穫の山です。
特徴
米国農務省の統計では、2025-26年度の全米のレモン結果樹面積6万2,500エーカーのうち5万4,000エーカーがこの州です。産地はサンホアキン・バレー、南部の沿岸と⁠内陸、砂漠地帯に分かれます。主力のユーレカは1858年にロサンゼルスでまかれた種から生まれ、リスボンはポルトガル起源。どちらも果肉は淡い緑がかった黄色で、酸がしっかりしています。
食べられ方
レモネードや炭酸飲料、パイやタルト、魚や⁠肉・飲みものに添える輪切りなど、園芸学の資料が挙げるレモンの定番の使い方は、この産地の流通とともに広まりました。統計では、2025-26年度の出荷のおよそ8割が生食向け、残りが加工向けでした。
出典

Citrus Fruits 2025 Summary (August 2026)USDA National Agricultural Statistics Service

Frost nucellar Eureka lemon (CRC 3005)Givaudan Citrus Variety Collection at UC Riverside

Frost nucellar Lisbon lemon (CRC 3176)Givaudan Citrus Variety Collection at UC Riverside

Production Practices and Sample Costs for Fresh Market Organic Lemons, South Coast, 1997University of California Cooperative Extension

Morton, J. 1987. Lemon. In: Fruits of warm climates, p. 160–168Purdue University, Center for New Crops & Plant Products

14

メキシコ · 北米

メキシコ

「リモン」はライムの⁠国

国
主な⁠品種
Italian lemon (Citrus limon) · Persian lime* · Mexican (Key) lime*
特徴
統計では「レモン・ライム」の大生産国ですが、中身の主役はライムです。米国農務省の報告は、種なしのペルシャライム、料理に欠かせない小粒のメキシカンライム(キーライム)⁠、そして米国で「黄色いレモン」と呼ばれるイタリアン種の3つに分けています。イタリアン種は2024年にタマウリパス州が7割強を占め、ほぼすべて輸出されます。
食べられ方
米国農務省の報告は、酸味の強いメキシカンライム(リモン・アグリオ)⁠をメキシコ料理の大切な素材と位置づけています。スペイン語の「limón」は多くの場合このライムを指し、黄色いレモンは輸出向けという色合いが濃い作物です。
出典

Citrus Annual – Mexico (MX2025-0069, 6 Jan 2026)USDA Foreign Agricultural Service (GAIN report)

Morton, J. 1987. Mexican Lime. In: Fruits of warm climates, p. 168–172Purdue University, Center for New Crops & Plant Products

15

アルゼンチン · 南米

トゥクマン

アルゼンチン北西部。サルタ州、フフイ州も

産地
主な⁠品種
Eureka Frost · Lisboa Frost · Limoneira 8A · Génova EEAT
季節
収穫は3〜8月(南半球の秋から⁠冬)⁠。
特徴
加工向けレモンの大産地。米国農務省の報告によると、トゥクマン州が国内のレモンのおよそ8割を生産し、生産量の70〜75%が精油、冷凍果肉、乾燥させた皮などの加工・輸出産業に向かいます。暖かい日中と穏やかな夜、夏の雨、肥えた沖積土が、厚い皮の実を育てると説明されています。
食べられ方
この産地のレモンの多くは、果実そのものより、精油や⁠果汁、乾燥した皮と⁠して世界の飲料や⁠菓子、香料の原料になります。生果は北半球の端境期にあたる時期に輸出されます。栽培面積は約4万5千ヘクタールと見積もられています。
出典

Citrus Annual – Argentina (AR2025-0026, 19 Dec 2025)USDA Foreign Agricultural Service (GAIN report)

16

チリ · 南米

チリ中部

首都州、バルパライソ州、コキンボ州

国
主な⁠品種
Eureka · Fino 49 · Génova
特徴
米国農務省の報告によると、栽培面積は首都州が約4割、バルパライソ州とコキンボ州がそれぞれ2割台。収量が多く収穫後の持ちがよいユーレカが中心で、早生のフィノ49が収穫期を広げ、昔からのヘノバはおもに国内向けです。水を多く使う作物からの切り替え先としても選ばれています。
食べられ方
国内では、夏にサラダや飲みもの用の生のレモンの需要が高まると報告されています。輸出先は米国が半分以上を占め、日本も主な仕向け先のひとつに挙げられています。加工用の実は果汁、精油、菓子向けの濃縮原料になります。
出典

Citrus Annual – Chile (CI2025-0035, 17 Dec 2025)USDA Foreign Agricultural Service (GAIN report)

17

ブラジル · 南米

ブラジル

主役はタヒチライム

国
主な⁠品種
Tahiti lime*
特徴
FAOの「レモン・ライム」統計で上位に入りますが、ブラジルの農業研究機関Embrapaの資料が「limão」として扱う主力は、種のないタヒチライム(ライマ・アシダ・タヒチ)です。生産は南東部に集まり、なかでもサンパウロ州が中心です。
食べられ方
Embrapaは、タヒチライムが菓子、塩味の料理、ジュース、さまざまな料理の調味、そしてカイピリーニャなどの飲みものに使われると紹介しています。国内向けが中心ですが、輸出も伸びています。
出典

Recomendações para a produção da lima ácida ‘Tahiti’ (Documentos 307)Embrapa (Empresa Brasileira de Pesquisa Agropecuária)

FAOSTAT – Crops and livestock products (bulk download, file dated 23 Dec 2025)Food and Agriculture Organization of the United Nations (FAO)

18

南⁠アフリカ · アフリカ

南アフリカ

東ケープ州、リンポポ州、西ケープ州

国
主な⁠品種
Eureka · Lisbon · 2PH Seedless · Limoneira 8A · Genoa
季節
収穫は1〜8月(生産者団体CGAの情報を米国農務省が引用)⁠。
特徴
米国農務省の報告によると、レモンの栽培面積は東ケープ州が43%、リンポポ州が34%、西ケープ州が14%。品種はユーレカが面積の75%を占め、リスボン、種なしの2PHが続きます。東ケープと西ケープは涼しい気候でレモンに向くと説明されています。面積は2015年から2020年のあいだに2倍以上に増えました。
食べられ方
輸出が中心の産地です。報告によると、国内ではレモンやライムはぜいたく品と見られ、おもにレストランで飲みものの飾りに使われます。加工用の実はレモン果汁、レモネード、スムージー、リキュールになります。国内の消費は年3万トンほどと見込まれています。
出典

Citrus Annual – South Africa (SF2025-0042, 19 Dec 2025)USDA Foreign Agricultural Service (GAIN report)

19

オーストラリア · オセアニア

オーストラリア

夏どりはクイーンズランド⁠州

国
季節
業界団体は「レモンとライムは一年を通して出回る」と案内。クイーンズランド州北部の夏どりは10〜12月に少しずつ始まり、本格的な収穫は1〜3月。
特徴
業界団体シトラス・オーストラリアによると、以前は輸入に頼っていた夏の時期を、クイーンズランド州北部や中部・南部の新しい園地が埋め、国産レモンを一年じゅう供給する目標に近づいています。
食べられ方
業界団体は、夏の楽しみ方として、新鮮な魚介にしぼる、暑い日にレモネードを作る、カクテルやビールにひと⁠切れ添える、といった使い方を挙げています。かつて夏は米国やエジプトからの輸入に頼っていました。
出典

What's in SeasonCitrus Australia (industry body)

More fresh Australian lemons available this summer (7 Dec 2022; Citrus Australia release)FreshPlaza (trade press, carrying a Citrus Australia statement)

20

中国 · アジア

安岳

中国、四川省資陽市

地理的表示安岳柠檬 (Anyue Lemon) · GI (EU–China agreement)
主な⁠品種
Eureka (Anyue lemon)
特徴
安岳県政府の発表によると、1920年代に栽培が始まり、ユーレカをもとにした「安岳レモン」が育てられてきました。丘の多い地形と⁠温暖で湿った気候が合うと説明されています。EUでは協定にもとづく地理的表示として保護されています。米国農務省は、中国のレモン・ライムには信頼できる品目別の統計が乏しいと注記しています。
食べられ方
県政府は、生食と⁠加工のどちらにも向くと紹介しています。
出典

eAmbrosia entry ‘安岳柠檬 / Anyue Ning Meng’ (PGI-CN-2683, registered; EU–China GI agreement, OJ L 408I, 4.12.2020)European Commission

eAmbrosia – EU geographical indications register (public API listing, searched 2026-10-05)European Commission

The 5th World Lemon Industry Development Conference Held In Anyue (press release, 18 Oct 2024)The People's Government of Anyue County (via Kyodo News PR Wire)

Citrus Annual – China (CH2025-0244, 19 Dec 2025)USDA Foreign Agricultural Service (GAIN report)

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インド · アジア

アッサム

インド。カジ・ネムの⁠産地

地理的表示Kaji Nemu · GI (India)
主な⁠品種
Kaji Nemu (Assam lemon)
季節
一年を通して実り、年に2回の山があります(登録申請書)⁠。
特徴
インドは「レモン・ライム」統計で世界有数ですが、広く「ニンブー」と呼ばれて使われているのは、多くがライムの仲間(カグジライム)です。そのなかでアッサムのカジ・ネムはレモン(Citrus limon)⁠として地理的表示に登録されています。申請書は、ふつうのレモンより大きく、種のない実が房になり、熟しても長く樹に残ること、独特の香りを特徴に挙げています。
食べられ方
登録申請書は、この酸味のある果実が料理、飲みもの、加工、薬用に広く使われると記しています。国全体で見ると、国の園芸委員会は、カグジライムをマハーラーシュトラ、アーンドラ・プラデーシュ、カルナータカの各州、レモンを西ベンガル、アッサム、ウッタル・プラデーシュの各州の作物と整理しています。
出典

Geographical Indications Registry – Application No. 609 ‘Kaji Nemu’ (Status: Registered)Intellectual Property India, Geographical Indications Registry

GI Application No. 609 – Kaji Nemu (application documents, scanned)oriGIn (GI application documents; original filed with the Indian GI Registry)

Citrus – Varieties (commercial varieties of citrus in India)National Horticulture Board, Government of India

Morton, J. 1987. Mexican Lime. In: Fruits of warm climates, p. 168–172Purdue University, Center for New Crops & Plant Products

品種の小さな⁠図鑑

産地の名前と⁠品種の名前は別のものです。同じ品種が、いくつもの国で育てられています。

* はライム(レモンとは別の⁠柑橘)⁠。

ユーレカ

アメリカ・カリフォルニア⁠州ロサンゼルス。1858年にまかれたイタリア由来の種から生まれ、1877年ごろ苗木商トーマス・ゲーリーが広めました。

中くらいからやや⁠小ぶりの楕円形。果肉は淡い緑がかった黄色で種が少なく、酸がしっかり。とげが少なく一年に何度も実り、晩冬から初夏が山。カリフォルニアのほか、南アフリカ、チリ、アルゼンチンなど各国の主力です。

リスボン

ポルトガル起源とされます(現地ではこの名で呼ばれていません)⁠。1824年にオーストラリアへ伝わり、19世紀半ばにはカリフォルニアに導入されました。

樹は大きく勢いが強く、とげが多い品種。寒さや⁠暑さ、風に強いとされます。実は中くらいの長円形で先の突起がはっきりし、果肉は淡い緑がかった黄色でとても酸っぱい。収穫の山は冬から⁠早春。

メイヤーレモン

中国。1908年に米国農務省の植物探検家フランク・メイヤーが北京近郊から米国へ導入しました。

レモンそのものではなく交雑種です(遺伝解析ではシトロンと、みかん×ぶんたん系の雑種の子とされます)⁠。皮はなめらかで薄く黄色〜橙色、果肉は淡い橙色がかった黄色で酸はおだやか。おもに冬に実ります。産地名ではなく品種名です。

フェンミネッロ(系統群)

イタリア。古くからある品種群で、土地ごとに多くの系統があります。

一年に何度も花を咲かせ、時期ごとに実の呼び名が変わります(冬のプリモフィオーレ、春のビアンケット、夏のヴェルデッロ)⁠。シラクーザ、エトナ、ロッカ・インペリアーレ、ガルガーノの地理的表示はいずれもこの系統が中心。古い資料ではイタリアの生産の4分の3を占めるとされました。

スフザート・アマルフィターノ

イタリア・アマルフィ海岸。

地理的表示「リモーネ・コスタ・ダマルフィ」に使われる品種。先のとがった細長い形が名前の由来(sfusato=紡錘形)⁠と結びつき、ほぼこの土地だけで栽培されるとEUの登録文書は記しています。品種名であり、地理的表示の名前とは別です。

インテルドナート

イタリア・シチリア⁠島メッシーナ。1875年ごろ、インテルドナート大佐が選び出したと伝わります。

シトロンとレモンの自然交雑種。早く熟し、皮は薄くなめらかで、種がごく少ない。イタリアのほかトルコ(エンテルドナート)⁠やギリシャでも早生と⁠して栽培されます。

モナケッロ

イタリア。レモンとシトロンの交雑種とみられています。

樹の勢いはおだやかで、ほとんどとげがありません。柑橘の病気「マル・セッコ」に強く、病気の出やすい土地で植えられてきました。酸はきつすぎないとされ、エトナの地理的表示で認められた品種のひとつです。

フィノ(プリモフィオリ、メセロ)

スペイン。

スペインの生産の約7割を占める秋冬の品種。皮は淡い黄色で、加工品づくりにも多く使われます。選抜系統のフィノ49はチリでも早生と⁠して栽培されています。

ベルナ

スペイン。

春から夏に出るスペインの品種で、生産の約3割。皮がやや⁠厚く濃い黄色、形はより卵形で、種は3〜4粒ほど。スペイン以外ではあまり見かけないと業界団体は説明しています。

ラマス

トルコ・メルスィン⁠県エルデムリ。

細長く先がとがった黄色い実で、果汁が多く香りがよい。11月初めから2月に収穫し、貯蔵に向きます。トルコ国内の地理的表示「エルデムリ・ラマス・レモン」の対象です。

ヴィラフランカ

イタリア・シチリア島の起源とされます。1875年ごろ米国フロリダへ。

ユーレカによく似た品種。古い資料では、長くフロリダの主力で、イスラエルでも商業栽培された⁠と記されています。

ジェノア(ヘノバ)

イタリア・ジェノヴァから1875年にカリフォルニアへ導入。

ユーレカに近い品種。南米で根づき、アルゼンチンでは選抜系統が主力品種のひとつ、チリではおもに国内向けの昔ながらの品種です。

サンタ・テレーザ

イタリア。病気で荒れたフェンミネッロの園で、病気にかからずに残った古い樹から。

フェンミネッロ系の選抜。マル・セッコが広がった1960年代のイタリアで多く植えられました。マントンの地理的表示で認められた品種のひとつでもあります。

カジ・ネム(アッサムレモン)

インド・アッサム州。

ふつうのレモンより大ぶりの実で、多くは種がなく、房になって一年じゅう実ります。インドの地理的表示に登録されたレモン(Citrus limon)⁠で、ライムの仲間の「ニンブー」とは別のものです。

レモンとライムは、どうちがう?

レモンとライムは、色ちがいの同じ果物ではありません。遺伝の研究によると、レモン(Citrus limon)⁠はサワーオレンジ(だいだいの仲間)⁠とシトロンの交雑から生まれました。小粒で香りの強いメキシカンライム(キーライム、Citrus aurantiifolia)⁠は、パペダと⁠いう野生の柑橘とシトロンの交雑。種のないタヒチライム(ペルシャライム、Citrus latifolia)⁠は、レモンとメキシカンライムからできた三倍体です。呼び名も国によって入れかわります。メキシコの「リモン」やインドの「ニンブー」は多くの場合ライムを指し、ブラジルの「リマォン」の主役もタヒチライムです。そのためFAOなどの統計は「レモン・ライム」をひと⁠まとめにしており、国別の数字をそのままレモンの量と⁠して読むことはできません。メイヤーレモンも、名前はレモンですが別の交雑種です。

世界の生産量を読むときの⁠注意

「レモン・ライム」の生産量(上位12か国と日本) · 2024 · トン

この統計は、レモンとライムを合算したものです。レモンだけの量でも、レモンの順位でもありません。インド、メキシコ、ブラジルなどはライムが中心です。

インド3,835,727
メキシコ3,291,622
中国(本土)2,319,972
アルゼンチン2,154,138
トルコ1,730,000
ブラジル1,718,010
アメリカ合衆国927,140
スペイン919,510
南アフリカ748,644
コロンビア592,297
イラン509,862
イタリア431,590
日本8,657

淡い色の棒は、FAOによる推計値・補完値です。

世界計 23,201,005 トン

FAOSTAT, Crops and livestock products: “Lemons and limes”, production, 2024取得日 2026-10-05

そして、日本へ。

世界の地図のなかで、日本のレモンはまだ小さな存在です。けれど、その小ささのなかに、皮まで使うための栽培と⁠いう、はっきりした個性があります。

日本のレモンへ

SETODA LEMON

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沼﨑 宏祥(ぬまざき・ひろよし)
J-Catalyst/東日本放送

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