白濁: 硫黄だけではない

いちばん多い白濁の原因は、硫化水素が空気に触れて細かな硫黄の粒になることです。だから硫黄泉は源泉では透明でも、浴槽で白くなることが多い(鳴子、蔵王、万座)⁠。粒が光を散らすので、浅い所は青白く、深い所は乳白色に見えます。

もう一つの白濁は、炭酸カルシウム⁠の粒。白骨温泉の「白骨」はこれで、硫黄の匂いはあるものの、白さの主役は炭酸カルシウムです。メタケイ酸が原因の白濁もあります。

白濁は日によって変わります。気温・湯の温度・換気で濃さが違い、同じ浴槽でも朝と⁠夕方で色が違う。「今日は白くない」は珍しくありません。

白骨温泉公共野天風呂 Soica2001 (talk) · Public domain

白骨温泉

Shirahone Onsen

長野県 · 日本⁠を知る100温泉 No.50

硫黄炭酸水素塩

湧いたときは透明。空気に触れて白くなる。白骨の白濁は硫黄だけでなく、炭酸カルシウム⁠が固まって「噴湯丘」まで作る湯の性質から来ている。

雪に囲まれた白濁の露天風呂 SpringField1967 · CC BY-SA 3.0

万座温泉

Manza Onsen

群馬県 · 日本⁠を知る100温泉 No.29

硫黄酸性

標高1,800m、日量540万リットル⁠の硫黄泉。空気の薄い山の上で、雪の中の白い湯に入る。

木造の共同浴場の入口 Zhaitengli · CC BY 4.0

鳴子温泉

Naruko Onsen

宮城県 · 日本⁠を知る100温泉 No.18

硫黄硫酸塩炭酸水素塩塩化物単純含鉄酸性

療養泉10種のうち7種がひとつの温泉郷に。駅前の共同浴場「滝の湯」は300円、下駄を鳴らして湯めぐりへ。

青: 粒子が青い光を散らす

別府・明礬の青白い湯、北海道・丸駒の青、ニセコや⁠箱根の「青い露天」。青は湯の成分の色ではなく、ごく細かい粒子(硫黄や⁠シリカ)⁠が空の青と⁠同じ原理で短い波長の光を散らすために見えます。粒が大きくなると⁠白に、もっと⁠増えると⁠乳白色に近づきます。

「コバルトブルー」「エメラルド」と宣伝される湯は、光の条件で見え方が変わることを知っておくと、期待と⁠実際のずれが小さくなります。

藁葺きの湯の花小屋 Belle Equipe · CC BY-SA 3.0

明礬温泉

Myōban Onsen

大分県 · 日本⁠を知る100温泉 No.87

硫黄酸性

藁葺き小屋の床で、地中の噴気と⁠青粘土から結晶が1日1ミリ育つ。1725年から続く『湯の花』づくりの現場。

湖の向こうにそびえる山 Soica2001 (talk) · Public domain

丸駒温泉

Marukoma Onsen

北海道 · 日本⁠を知る100温泉 No.4

塩化物炭酸水素塩硫酸塩

湯船の深さは支笏湖の水位と⁠同じ。湖と⁠つながった露天がある。

緑: 硫黄とpHのバランス

月岡温泉(新潟)⁠、国見温泉(岩手)⁠の緑の湯は、硫黄の化合物の種類と⁠pHの組み合わせで生まれます。黄緑から深い緑まで幅があり、やはり日によって変わる。鉄分を含む湯が黄緑を帯びることもあります。

月岡温泉の町並み 663highland · CC BY 2.5

月岡温泉

Tsukioka Onsen

新潟県 · 日本⁠を知る100温泉 No.38

硫黄塩化物

入浴剤と⁠間違われるほどのエメラルドグリーン。硫黄の多さが、そのまま色になって湯船に浮かぶ。

茶褐色・赤: 鉄がさびる

含鉄泉は、湧き出すときは透明。空気に触れて鉄がさびる(酸化する⁠)⁠と茶色〜赤褐色に濁ります。有馬の金泉、伊香保の黄金の湯、不老ふ死温泉がその代表で、鉄を含む湯はすべてこの変化を起こします。浴槽や⁠床が赤く染まるのもこのため。タオルは色移りします。

茶色く濁った露天風呂 663highland · CC BY-SA 4.0

有馬温泉

Arima Onsen

兵庫県 · 日本⁠を知る100温泉 No.62

含鉄塩化物二酸化炭素放射能(ラドン)

海水より濃い塩と⁠鉄の『金泉』と、炭酸と⁠ラドンの『銀泉』。まったく違う2つの湯が、徒歩5分の距離で湧く。

伊香保温泉の石段街 ShuichiNakayama · CC BY 4.0

伊香保温泉

Ikaho Onsen

群馬県 · 日本⁠を知る100温泉 No.28

硫酸塩炭酸水素塩塩化物

365段の石段の下を源泉が流れ、段ごとに宿へ分けられる。鉄で茶色に色づく「黄金の湯」の町。

夕暮れの海岸の岩場に設けられた露天風呂 おにく · CC0

黄金崎不老不死温泉

Furofushi Onsen

青森県 · 日本⁠を知る100温泉 No.12

塩化物含鉄

日本海の波打ち際、岩場に掘った茶褐色の湯船。遮るものなく夕日が海に沈む。

黒: 太古の植物

東京の黒湯、北海道の十勝川、新潟のいくつかの温泉は、紅茶〜コーラのような黒褐色です。火山ではなく、地下の泥炭や⁠亜炭層を通った水が、植物由来の有機物(腐植質)⁠を溶かし込んだもの。「モール泉」と⁠呼ばれ、とろりとした肌触りが特徴です。十勝川温泉は世界でも珍しい植物性モール⁠泉⁠と⁠して知られます。

十勝川沿いに並ぶホテル 663highland · CC BY 2.5

十勝川温泉

Tokachigawa Onsen

北海道 · 日本⁠を知る100温泉 No.6

塩化物炭酸水素塩

火山ではなく、太古の植物が温めた湯。茶色くとろりと⁠したモール泉の代表。

蒲田温泉

Kamata Onsen

東京都 · 日本⁠を知る100温泉 No.35

炭酸水素塩塩化物

手を入れると⁠見えなくなるほど黒い湯が、東京の住宅街の銭湯に、600円で湧いている。

色が変わる温泉

湯の峰温泉の「つぼ湯」は日に7度色が変わると⁠いわれ、透明・白・青が入れ替わります。酸ヶ湯や⁠鳴子の一部の湯も、天候で白濁の濃さが変わります。理由は上に書いたとおり、粒子の量と⁠光の条件。だからこのアトラスは、写真の色を強調しません。実際のお湯は、その日の色です。

谷あいの小さな温泉集落 Nekosuki · CC BY-SA 4.0

湯の峰温泉

Yunomine Onsen

和歌山県 · 日本⁠を知る100温泉 No.66

硫黄炭酸水素塩

世界遺産に登録された湯船に、30分だけ入れる。岩をくり抜いた『つぼ湯』は、熊野詣の人々が身を清めた湯だ。

山中に建つ大きな木造の旅館 ゆ^ω^び · CC BY-SA 2.1 jp

酸ヶ湯

Sukayu Onsen

青森県 · 日本⁠を知る100温泉 No.9

酸性硫黄

160畳、柱一本ない総ヒバ造りの千人風呂。日本一の雪の中で、酸の湯に男女が浸かる。

用語

モール泉
植物由来の有機物を含む黒褐色の湯。ドイツ語の Moor(湿原・泥炭)から。
析出
溶けていた成分が固体になって出てくること。白濁や⁠湯の花の原因。

関連する温泉

白骨温泉公共野天風呂 Soica2001 (talk) · Public domain

白骨温泉

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湧いたときは透明。空気に触れて白くなる。白骨の白濁は硫黄だけでなく、炭酸カルシウム⁠が固まって「噴湯丘」まで作る湯の性質から来ている。

藁葺きの湯の花小屋 Belle Equipe · CC BY-SA 3.0

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月岡温泉の町並み 663highland · CC BY 2.5

月岡温泉

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硫黄塩化物

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茶色く濁った露天風呂 663highland · CC BY-SA 4.0

有馬温泉

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含鉄塩化物二酸化炭素放射能(ラドン)

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十勝川沿いに並ぶホテル 663highland · CC BY 2.5

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火山ではなく、太古の植物が温めた湯。茶色くとろりと⁠したモール泉の代表。

谷あいの小さな温泉集落 Nekosuki · CC BY-SA 4.0

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Yunomine Onsen

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硫黄炭酸水素塩

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